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title: いちばん売れる人を、日本法人の責任者にしてはいけない
description: ピーターの法則は、人は不適任の地位まで昇進すると言う。昇進が見るのは前の役割の装備で、新しい役割が求めるのは別の層、パターンと環境だ。日本法人の責任者という役割は、トップ営業と重なる部分が思うより少ない。
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# いちばん売れる人を、日本法人の責任者にしてはいけない

[佐藤伸明](https://nobusato.jp/ja/profile?hsLang=ja)

![いちばん売れる人を、日本法人の責任者にしてはいけない｜昇進後のつまずきは、前の役割で見えなかった層から出る](https://nobusato.jp/hs-fs/hubfs/covers-2026-10/dont-promote-your-best-seller-to-country-manager-cover-ja.png?width=1200&height=630&name=dont-promote-your-best-seller-to-country-manager-cover-ja.png)

法人設立から一年半、営業部長が一人で契約の六割を取っていた。本社は彼を法人の責任者にすると決めた。理由は自然だ。業績が最も良く、顧客を最も知り、現地の社員も彼を認めている。半年後、売上は落ちた。彼が顧客を回らなくなったからだ。チームからは二人が去り、本社への報告は遅れがちになった。人を育てる型を彼は持っていなかったし、報告書を書くのはもともと嫌いだった。本社は、人を見誤ったのかと考え始めた。

人は見誤っていない。見誤ったのは役割のほうだ。

## 風刺の本が当てたこと

1969年、ローレンス・ピーターとレイモンド・ハルは、階層組織では誰もが自分の不適任な地位まで昇進し、そこで止まる、と書いた。論理は単純だ。今の役割で成果を出せば昇進する。新しい役割は別の能力を求め、そこで成果が出なければ昇進は止まる。結果として、どの地位にも、その仕事に向いていない人が座る。著者たちは風刺のつもりで書いたが、本は経営の常識になった。冗談にしては、昇進制度の穴を正確に突きすぎていたのだと思う。

2004年、経済学者のラジアーがより冷静な説明を与えた。昇進の根拠は前の役割での成績で、成績には運と役割の特性が混じっている。別の役割では再現されるとは限らない。この説明は、誰かが怠けたとか能力がないとかを仮定しない。Aの役割の成績でBの役割を予測することが、そもそも当たらない、と言っているだけだ。

昇進後の三つのつまずきは、前の役割で見えなかった層から出ている

設立一年半の日本法人で、契約の六割を取る営業部長を責任者にした例。四層（内核・パターン・装備・環境）で整理

半年後に起きたことどの層か先に打つ手

半年後売上が落ちた。顧客を回らなくなった

→

装備*顧客関係が前線から抜けた*

→

専門職の上り道で、待遇を上げて前線に残す

半年後チームから二人が去った

→

パターン*「自分でやる」。育てる型がない*

→

三か月の責任者代行で、先にこの層を見る

半年後本社への報告が遅れがちになった

→

環境*四者の長い均衡は営業の場と違う*

→

役割を十項目で採点し、空白は空白のまま扱う

人は見誤っていない。見誤ったのは役割で、昇進が見ていたのは装備だけだった。

図1　契約の六割を取っていた営業部長を日本法人の責任者にすると、半年で売上が落ち、二人が去り、報告が遅れたが、どれも前の役割では観察できなかったパターンと環境の層から出ており、昇進前に役割を採点するか三か月の代行で試せば避けられた。

## 四つの層で見る

私は人を四つの層で見ている。内核、パターン、装備、環境。トップ営業が昇進するとき、本社が見ているのは装備だ。製品知識、顧客との関係、交渉の技術。これらは責任者の役割でも役に立つが、重みは三割以下に落ちる。

責任者の役割が本当に使うのは、パターンと環境である。パターンとは、その人がどう動く癖を持っているか。自分で飛び込んで解決するのか、他人に解決させるのか。関係で動かすのか、ルールで動かすのか。悪い知らせに対して、先に処理するのか、先に報告するのか。トップ営業のパターンはほぼ「自分でやる」で、営業では長所であり、責任者では人が辞める直接の原因になる。環境とは、どんな場なら力が出るか。明確な目標と相手がいるときか、曖昧な多者の駆け引きの中か。営業の環境は勝ち負けのはっきりした場で、責任者の環境は、本社、社員、顧客、コンプライアンスの四者がどれも完全には満足しない長期の均衡だ。

要するに、昇進のときに見ているのは、前の役割で表に出ていた層だ。新しい役割で生き残れるかを決めるのは別の二層で、しかもその二層は、前の役割ではほとんど観察する機会がない。ピーターの法則はこういう仕組みで動いている。「彼が優秀かどうか」とは、あまり関係がない。

## 日本法人の責任者という役割の特殊さ

日本では、この役割は他国以上に営業から遠い。責任者の時間の大半を占めるのは、労務とコンプライアンス（労働基準監督署、社会保険、就業規則）、本社との翻訳の仕事（[言語の翻訳だけではない](https://nobusato.jp/ja/blog/bilingual-staff-are-not-translators?hsLang=ja)）、採用と定着（[一人が去るコスト](https://nobusato.jp/ja/blog/true-cost-of-hiring-in-japan?hsLang=ja)）、そして顧客の前で製品ではなく会社を代表すること。どれも営業のKPIには出てこない。

もう一つある。日本の営業の名手はしばしば関係型で、彼の顧客は彼の顧客だ。責任者にすることは、法人で最も価値のある顧客関係を前線から引き揚げ、同時に管理をしたくない人に管理をさせることになる。両方で損をする。

## 手の打ち方

人より先に役割を採点する。[役割を採点する](https://nobusato.jp/ja/blog/score-the-role-before-the-person?hsLang=ja)の方法をここで使うなら、責任者の仕事を十項目に分け、各項目が主にどの層を使うかを書き、候補者がその層で証拠を持っているかを見る。トップ営業は装備の項目で満点で、パターンと環境の項目はたいてい空白だ。零点ではなく、データがない。空白を推測で埋めたくなる気持ちはわかるが、空白は空白のまま扱うほうが安全だ。

営業の名手に、管理職にならない上り道を用意する。日本の会社がこの数年進めている専門職の複線型は、この問題へのひとつの答えになっている。等級と報酬は上がり、チームは持たない。トップ営業が責任者と同格の待遇と肩書を得て、六割の契約を取り続けるほうが、昇進させて落ちるのを見るより安い。[報酬の設計](https://nobusato.jp/ja/blog/four-relational-models-and-pay-design?hsLang=ja)と[最初の一人](https://nobusato.jp/ja/blog/first-hire-in-japan-should-not-be-sales?hsLang=ja)の記事も参考になると思う。

それでも昇進させるなら、役割を一つ借りて試す。三か月の責任者代行、あるいは小さなチームの責任者。パターンと環境の二層に何かがあるかを見る。あれば昇進させ、なければ誰も面目を失わない。ピーターの法則でいちばん高くつくのは、誤って昇進させることより、そのあと降ろせないことだ。

ピーターの本には、あまり引かれない一文がある。不適任な管理者に補佐をつけても効かない。日本法人でのこの一文の形は、人を育てられない責任者に副社長を置くと、誰の指示を聞けばいいか分からない人が一人増えるだけ、ということだと感じている。

参考

- [Peter, L. J. & Hull, R. (1969). The Peter Principle. William Morrow](https://en.wikipedia.org/wiki/Peter_principle)
- [Lazear, E. P. (2004). The Peter Principle: A Theory of Decline. Journal of Political Economy 112(S1)](https://doi.org/10.1086/379943)

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