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title: 競合を間違えるのは、競合がいないより悪い
description: 知名度で並べた競合リストから出てくるのは業界事典で、判断の材料ではない。リストに入る理由は三つだけ。人材の重なり、事業上の脅威、参入と資源の支配。着手前に「今回は何を奪い合うのか」を一行で書く。
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# 競合を間違えるのは、競合がいないより悪い

[佐藤伸明](https://nobusato.jp/ja/profile?hsLang=ja)

![競合をリストに入れる三つの論理と、どれも満たさなければ外すというルールの図](https://nobusato.jp/hs-fs/hubfs/picking-the-wrong-competitors-cover-ja.png?width=1200&height=630&name=picking-the-wrong-competitors-cover-ja.png)

市場調査の依頼を受けると、たいてい先に競合リストを渡される。リストにはだいたい二つの特徴がある。長いこと、そして業界でいちばん有名な会社が並んでいることだ。

私はそのリストをいったん脇に置いて、一つだけ聞く。この会社たちと、何を奪い合っているのですか。

すぐに答えられる人は少ない。答えられないなら、そのリストは知名度順に並んでいる。知名度順のリストから出てくるのは業界の事典であって、判断の材料ではない。

## 「大手ばかり」のリストはなぜ害になるのか

注意と予算を、間違った場所へ向けてしまうからだ。

十社のリストがあり、一社ずつ報告書を書き、比較表を作る。三か月後、表はきれいに仕上がる。しかし十社のうち、実際に顧客を奪いに来るのは二社、人材の供給源になるのは別の三社、残りの五社は自社の商売とほとんど接点がなく、ただ有名なだけ、ということがよくある。予算の半分を、自社に影響しない相手の調査に使ったことになる。

私自身、そういう調査をしたことがある。リストの数社は製品が自社とほぼ同じで、狙う顧客も同じだった。これが競合でなければ何なのか、と当時は思った。報告書を仕上げてから、ようやく見えた。顧客の獲得の仕方がまるで違っていた。使う経路、顧客への接触の仕方、何で決まるか、どれも重なっていない。製品が似ていることと、同じ市場で戦っていることは別だった。細かく作った報告書は、判断にはほとんど役立たなかった。

さらに悪いのは、方向まで引きずられることだ。リストの大手がやっていることを追いかけたくなるが、その打ち手は大手の規模のために設計されている。

## 競合はどう絞り込むのか

私の絞り込みは三つの論理しか使わない。リストに入るには少なくとも一つを満たす必要があり、三つとも満たさない会社は、どれほど有名でも入れない。

一つ目は、人材の重なり。その会社のある職種が、自社の職種と同じ種類の仕事をしている。候補者の供給源になる会社だ。分析の単位は会社そのものではなく、職種と会社の組み合わせになる。まったく違う商売の二社が、営業職では深く重なることがある。

二つ目は、事業上の脅威。自社の顧客を奪っている、あるいは奪いに来る会社。分析の単位は、その事業ラインの責任者と会社の組み合わせだ。知りたいのは会社全体の大きさではなく、自社を脅かす事業を誰が、どのチームで動かしているかである。

三つ目は、参入と資源の支配。顧客を奪いもせず、人材も供給しないが、自社が土俵に上がれるか、いちばん大きな収入を取れるかを決めている主体。規制当局、免許を出す業界団体、棚を握るプラットフォーム、上流の割当を持つ供給者がここに入る。報告書の隅に背景として置くものではなく、リストの真ん中に置くものだ。

1人材の重なり職種 × 会社候補者の供給源になる2事業上の脅威事業責任者 × 会社自社の顧客を奪いに来る3参入・資源の支配規則 × 主体土俵に上がれるかを決める三つとも満たさなければ、有名でも入れない

**Fig.1**リストに入る理由は三つだけ。各社の横にどれかを書く。

三つ目がいちばん抜けやすい。「競合」という言葉で考えると、規制当局をリストに入れる発想が出てこないからだ。しかし多くの業界で、参入に関する一つの決定が、すべての参加者の条件を同時に変える。しかも予告なく、公開された基準もなしに。

## 着手前に一行書く。今回は何を奪い合うのか

二つ目の論理は、奪い合うのは顧客だ、という前提に立っている。B2Bの多くの場面ではそれで合っているが、どこでも成り立つわけではない。参加者同士が顧客を奪い合わず、順位や、希少な人材や、予算枠や、規制の窓口を奪い合っている業界もある。

だからリストの表の上に、必ず一行書く。今回の競争対象 ＝ X、Y、Z。

この一行がないと、二つ目の論理は空回りして、「有名な同業をひととおり入れる」に戻ってしまう。書いてあれば、一度も現場で出会わない会社がなぜリストにいるのか、毎日顧客先で鉢合わせる会社がなぜいないのかが説明できる。先ほどの私の失敗は、まさにこの一行を書かなかったことにある。製品が似て、顧客が似ていたので、同じ顧客を奪い合っていると決めてかかり、相手がどうやって顧客を取っているかを確かめなかった。

## リストが正しいと、どう示すか

各社の横に、入れた理由を書く。理由は上の三つのどれかに限る。

簡単に見えるが、これがリスト全体でいちばん強い制約になる。理由が書けない会社は、印象で入ったということだ。この基準で見直すと、依頼側が持ってきたリストはたいてい半分に減り、代わりに、聞いたこともないが毎日顧客を奪っている会社が二、三社加わる。

リストに残すが、別に印をつけておく会社もある。すべての軸で比較できるわけではない会社だ。エンドユーザーに向き合わない基盤の供給者は、顧客獲得の効率で比べても意味がなく、その堀は免許と技術にある。すでに市場から退いた会社は、反面教師として入れるのであって、戦略上の参加者としてではない。こうした違いそのものが発見であり、表の上で均してしまう雑音ではない。

## 見落とされやすい信号。共有された希少資源

リストを絞ったあと、もう一つ確かめることにしている。直接競合する数社が、第三者の握る同じ希少資源に依存していないか。同じ基盤の供給者、同じ免許、同じ経路の棚、同じ上流の割当。

依存していれば、結論が二つすぐに出る。その能力はもはや差別化の要素ではなく、借りられる基盤になっている。そして競争の堀は別の場所、たいていは顧客側の体験と獲得の効率へ移っている。

集中リスクも同時に見える。共有している供給者が一度大きく止まれば、それに依存する競合各社と、その顧客がまとめて止まる。

この関係は、供給者側のプレスリリースに書かれていることが多く、競合側にはない。供給者には顧客獲得を発表する動機があり、競合にはないからだ。探すなら供給者の側からになる。

## リストを固めたら、途中で足さない

確定したリストは、その後の作業すべての固定された範囲になる。各社を同じ型で書き、最後に横並びで比較する。

途中で会社を足すと、比較表が成り立たなくなる。手戻りの原因としていちばん多いのがこれで、半分まで進んだところで一社思い出して足し、型が合わず、項目が揃わず、最後の比較表のどのマスも根拠を説明できなくなる。

深く調べてから比べるのは、逆の順番より遅い。それでも、あとから問い詰められて耐えられる唯一のやり方だ。リストが決まったあと、会社から人へどう進むかは[「人材マップは名簿ではない」](https://nobusato.jp/ja/blog/talent-map-is-not-a-list?hsLang=ja)に書いた。

## まだ答えが出ていないこと

三つの論理で「誰を入れるか」は説明できるが、「リストは何社が適切か」には、まだよい答えがない。予算と時間の上限が残す社数を決め、同じ候補リストでも、予算が違えば残る顔ぶれは変わる。今は報告書の冒頭に予算を書き、依頼側の前提と並べて、絞り込みの条件を明示するようにしている。それでも、何社なら足りるかは、毎回経験で決めている。

皆さんの会社の競合リストは、前回どんな基準で決まっただろうか。

日本に入るとき、何が本当に難しいかの数字は、[「外資系企業が日本でいちばん困っていること」](https://nobusato.jp/ja/blog/what-foreign-companies-struggle-with-in-japan?hsLang=ja)に書いた。

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