日本で LinkedIn は役に立つのか

「LinkedIn って、日本で本当に使われているんですか」と聞かれることがある。聞いてくるのは、たいてい日系企業で長く働いてきた人だ。周りで使っている人を見かけない。けれど外資系の知人は当たり前のように使っている。どちらの感覚が正しいのか、手元の数字で確かめてみた。
私の見立てでは、日本の LinkedIn は「小さいが、偏って濃い」市場だ。働く人全体から見ればごく一部だが、特定の業界と職種には人が集まっている。自分がその中にいるかどうかで、答えが変わる。
日本の LinkedIn 会員はどのくらいいるのか
LinkedIn 自身が日本の会員数として出した数字は、2022年8月の「国内の登録会員数が300万人を突破」が確認できる最新の公式発表だった(Impress Watch、2022年8月22日)。2024年1月の Business Insider Japan の記事では、日本代表が「2024年には400万人に届く見込み」と話しているが、これは見通しであって実績ではない。2026年10月時点で、それより新しい公式の日本向け数字は見つけられなかった。
比べる相手として、総務省「労働力調査」(詳細集計)の2025年平均では、日本の労働力人口は7,015万人だ(2026年2月13日公表)。2022年の300万人をこれで割ると4%強になる。登録しているだけの人も含めた数字なので、日常的に開いている人はもっと少ないはずだ。
国内の他のサービスと並べると、印象が少し変わる。
Fig.12022〜2026年に各社が公表した数字で比べると、日本の LinkedIn の公式会員数は、ビズリーチ・Wantedly・Eight とほぼ同じ300万〜450万人の帯にあり、どれも労働力人口の4〜6%程度にとどまる。
ビズリーチのスカウト可能会員数は2026年1月末時点で329万人以上(ビジョナル 半期報告書、2026年3月)。Wantedly の登録ユーザー数は432万人(2025年8月期 決算説明資料)。名刺アプリ Eight は2026年7月に450万人を超えた(Sansan プレスリリース、2026年7月31日)。
LinkedIn だけが特別に小さいわけでもない。日本の転職・ビジネス系サービスは、どれも数百万人規模で並んでいる。違うのは、誰がそこにいるかだ。
誰が LinkedIn にいて、誰がいないのか
ここからは統計ではなく、採用の現場で見てきた感覚の話になる。日本の LinkedIn で人が厚いのは、外資系企業、IT・SaaS、コンサルティング、それにバイリンガルの専門職だ。採用する側でも、外資系の人事や、英語圏の候補者を扱う人材紹介会社のコンサルタントがよく使っている。
反対に、日系の大手やメーカー、地方の企業で働く人は、アカウントはあっても数年前のまま、という例が多い。日系企業の中途採用はビズリーチや紹介会社が主な経路で、LinkedIn を経由することは少ないと感じている。
だから「使われているか」という問いには、自分が目指す先がどちらにあるかで答えるのがいいと思う。人材マップのどの円に自分がいるかで書いた話に重ねると、外資系やグローバル職種を同領域・隣接領域として狙う人には、LinkedIn は採用側から見える場所になる。日系の同業他社だけを見ている人には、優先順位は下がる。
見つけてもらうためのプロフィールの作り方
採用担当や紹介会社が LinkedIn で人を探すとき、まず打ち込むのは職種名と領域のキーワードだ。そして日本のポジションなら、日本語と英語の両方で検索することが多い。「経理」で探す人もいれば「Accounting Manager」で探す人もいる。
そこで、プロフィールは日本語と英語の両方で見つかるようにしておきたい。LinkedIn には別の言語でもう一つプロフィールを作る機能があるので、英語のメインに日本語版を足す(あるいはその逆)のが手堅い。
見出し(ヘッドライン)は「職種+領域」で書くのがいいと思う。「頑張る営業マン」より「法人営業マネージャー|SaaS・製造業向け」のほうが、検索にかかり、開いた人にも一行で伝わる。会社名は職歴欄に書いてあるので、見出しに入れる必要はあまりない。
「Open to Work」は慎重に使いたい
「Open to Work」には、全員に見せる設定と、採用担当(LinkedIn Recruiter の利用者)だけに見せる設定がある。Coursera の解説記事によれば、採用担当だけに見せる設定でも、今の勤務先の採用担当に見えないことを LinkedIn は保証していないという。表示の仕様は変わることがあるので、使う前に LinkedIn のヘルプで最新の説明を確かめておきたい。
私は候補者について、非公式に周りへ聞いて回るような照会はしないことにしている。本人の転職活動が漏れるおそれがあるからだ。同じ理由で、在職中の人が「Open to Work」を全員公開にするのはすすめない。業界が狭い日本では、紹介会社のコンサルタントが今の上司とつながっていることも珍しくない。
各社の登録者数は、同じ物差しで測られていない
ここで使った数字は、どれも心もとない。各社が自分で公表した登録者数で、定義も違う。ビズリーチは無料会員を含むスカウト可能会員、Eight は名刺を登録した認証ユーザー、LinkedIn は2022年の登録会員だ。一人が複数に登録している重複もわからないし、月に一度でも開く人がどれだけいるかも出ていない。
第三者の推計(NapoleonCat、広告APIベース)は2026年9月時点で日本の LinkedIn 利用者を約620万人としているが、これは広告の到達数の見積もりで、公式発表とは性質が違う。増えている方向だけは、どの数字も示していると思う。
日本の転職率そのものが低いことも、効き方を左右している。日本の転職率の数字を見ると、毎年動く人は少数派だ。動く人が少ない市場では、見つけてもらえる場所を一つ持っておくことの価値は、むしろ上がるのかもしれない。
LinkedIn を毎日開く必要はないと思う。ただ、数年後に声をかけてほしい相手がいるなら、その人が探しに来る場所に、今の自分が正しく載っているかどうかは確かめておいていい。
記事にするほどではない日々の気づきは、LinkedIn に書いています。LinkedIn をフォローする