佐藤伸明 Nobu Sato

日本の転職率は、三十年で二ポイントしか動いていない

日本の転職率は、三十年で二ポイントしか動いていない

日本人は転職しない、と長く言われてきた。ここ数年は逆に、日本人も転職するようになった、という記事をよく見る。

どちらも半分は正しい。総務省の数字を1990年から並べてみると、動いてはいる。ただし動きは小さく、動いているのは企業が採りたい層ではない。

一千万人が希望し、三百万人が動いた

2024年、転職などを希望する就業者は1,000万人。実際に転職した人は331万人だった。希望者の三人に一人が動いた計算になる。

リクルートワークス研究所が同じ人を追った調査では、転職を希望していた人のうち、一年後も元の会社にいる人が87%。正社員に限ると、動いたのは8.4%にとどまる。

「転職したい人が増えた」のは事実で、希望者はこの十年で二百万人以上増えた。だが、希望と行動のあいだの段差は、三十年ほとんど変わっていない。

200400600800100020192020202120222023転職等希望者 1,035転職者 325

Fig.12018〜2023年の四半期ごとの転職等希望者(上)と転職者(下)。上の線は伸び、下の線はほぼ横ばい。単位:万人。

男性の転職率、3.0%から3.8%へ

就業者のうち、その年に転職した人の割合を転職率と呼ぶ。1990年から連続した数字がある。

男性は1990年3.0%、2000年4.1%、2007年に4.6%の山、2022年3.8%。女性は1990年4.1%、2007年6.6%、2022年5.4%。

三十年で男性は一ポイント弱、女性は一ポイント強。転職者数の最多は2019年の353万人で、コロナ禍で落ちたあと、2024年の331万人はまだそこに戻っていない。

この折れ線を海外の経営者に見せると、たいてい数字の間違いを疑われる。

2%4%6%8%1990199520002005201020152020女性 5.4男性 3.83.04.1

Fig.21990〜2022年の転職率。男性は三十年間、3%から4.6%のあいだを往復している。2001年までは2月の特別調査、2002年以降は年平均。

動いているのは、若年層と女性

年齢で分けると、見え方が変わる。

15〜24歳の男性は、1990年7.5%、2002年以降はおおむね10〜13%。25〜34歳は4〜6%台。35〜44歳は2.2〜3.7%。45〜54歳は三十年かけて1.5%から2.5%へ、2.6%を超えた年はない。

45歳の男性が今年転職する確率は四十分の一。1990年は六十分の一だった。これが三十年分の変化のすべてだ。

海外企業の日本法人が採りたいのは、まさにこの層である。四十代、大企業で十五年、チームを率い、顧客を持っている。日本でいちばん動かない人たちだ。

4%8%12%16%199019952000200520102015202015〜24歳 7.825〜34歳 6.035〜44歳 3.045〜54歳 2.2

Fig.3男性の年齢階級別転職率。若年層は10%以上で上下し、45〜54歳は三十年間2%前後に張り付いている。

採用にとっての意味

一つ目。「日本人も転職するようになった」を前提に採用計画を立てると外れる。動いているのは二十代と女性で、この二つの層は十年前より確かに動きやすい。三十五歳以上の男性は、親の世代とほぼ同じ水準にいる。

二つ目。中年層は採れないのではなく、自分からは来ない。転職率2.5%は、百人のうち二、三人がその年に動くという意味だ。応募を待っても来ない。先にその二、三人を探し出す作業が要る。私はこれをスカウトと呼んでいて、職種にかかわらず、採用はスカウトから始めている。人材マップは名簿ではないに書いたとおりだ。

三つ目。一度転職した人は、二度目が楽になる。私自身の経験では、転職経験のある人には声が届き、一度もない人にはほとんど届かない。だからスカウトのとき、履歴にその一回があるかどうかを最初に見る。

まだ確信のないところ

転職率は過去一年の行動であって、意欲ではない。数字は2024年までで、2023年と2024年の春闘は三十年ぶりの賃上げ幅だった(日本の賃金の七十五年に書いた)。賃金差が開いたとき中年層が動くかどうかは、あと二年は見ないとわからない。

もう一つ。この統計は日本人と在日外国人を分けていない。外国人の転職率はかなり高いはずだが、公表データでは切り分けられない。

自社の日本法人にいる四十代は、応募してきた人だろうか。それとも探し出した人だろうか。


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