日本の会社の財務は、ほとんど見えない

競合分析や人材マップをつくるとき、多くの人が最初につまずくのは、相手の会社の売上や従業員数が分からないことだと思う。
調べ方が悪いわけではない。日本の会社の多くは、そもそも財務を公開していない。
法律上の義務と、実際の公告率
会社法は株式会社に毎年の決算公告を求めていて、少なくとも貸借対照表を、大会社は損益計算書も公告しなければならない。怠った場合は100万円以下の過料の対象になる。
東京商工リサーチの2022年の集計では、決算公告が必要な株式会社は国税庁の統計から約217.9万社と推計され、その年に官報で決算公告をしたのは約4.02万社、1.8%だった。前年も1.8%である。上場企業は有価証券報告書があるため、この集計には含まれない。
これほど低い理由について、東京商工リサーチは、過料がほとんど適用されていないことを挙げている。
Fig.12022年、決算公告が必要な株式会社のうち官報で公告したのは1.8%。官報だけの集計で、電子公告や新聞での公告は含まれないため、実際の公告率はこれより高いが、結論を変えるほどではないと考えている。
口径の注意:数えているのは官報だけ
決算公告の方法は、官報、日刊新聞、自社サイトでの電子公告の三つがある。東京商工リサーチの数字は官報だけを数えていて、ほかの二つは入っていない。
厳密には、1.8%は「官報で確認できる割合」であって、公告率そのものではない。ただ、官報で公告していない中小企業の多くは、自社サイトにも載せていないと見てよいと思う。知りたい非上場の会社の財務は、まず見つからないと考えておいたほうがよい。
見つからなければ「未開示」と書く
競合分析や市場マップでいちばん多い失敗は、空欄を無理に埋めることだ。売上が公開されていないので、従業員数に業界の一人あたり売上を掛けて表に入れる。その数字が、後の議論では事実のように扱われていく。
私は、見つからない欄には「未開示」と書き、代わりに使える指標とその出所を隣に記すようにしている。推計してもよいが、推計であることと計算の仕方は明記する。判断する人にとっては、どこが事実でどこが推測かが分かることのほうが、埋まった表よりずっと大事だ。
どの会社を競合として並べるかは競合を間違えるのは、競合がいないより悪いに、リストが答えるべき問いは人材マップは名簿ではないに書いた。
三つの代わりの情報源
日本の会社の規模を見積もるとき、公開されていて合法に使える情報源は次の三つだ。
一つめは、日本年金機構の「厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システム」。会社名や法人番号で検索すると、事業所ごとの厚生年金の被保険者数が分かる。毎月20日ごろの数字が翌月に更新され、サイトにある「従業員約○名」より当てになる。注意点は二つある。本社で一括適用していれば支店の人数も本社に含まれること、そして検索結果の転載や二次利用は禁止されていることだ。自分で見るのはよいが、外に出す資料には貼らない。
二つめは官報。決算公告をしている少数の会社は、官報で貸借対照表が見られる。合併、減資、解散なども官報に公告されるので、最近何が起きたかも分かる。
三つめは信用調査会社のレポート。東京商工リサーチや帝国データバンクは、非上場企業の売上、利益、従業員数、取引先などの情報を有料で提供している。会社の自己申告と調査員の推定が混ざっているので、使うときは出所を明記したい。
三つを突き合わせれば、30人の会社か300人の会社か、売上が数億円か数十億円かは、おおよそ判断できる。人材マップには、たいていこの精度で足りる。
東京商工リサーチの集計は2022年のもので、同じ口径の新しい数字は見当たらなかった。電子公告の割合には信頼できる統計がなく、本当の公告率が3%なのか10%なのかは分からない。
適用事業所検索の人数は厚生年金に加入している人で、パートや派遣は含まれず、部門の内訳も分からない。チームの規模を見積もるには、LinkedInや業界の情報と組み合わせる必要がある。
競合分析で数字が見つからないとき、皆さんはどう扱っているだろうか。
開示されている上場企業でも、数字が一つとは限らない。同じ会社で範囲が四つある例は女性管理職比率は一つではないで見た。
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