管理職の3人に1人は「想定外」の理由で降りている

課長以上を経験した50〜64歳の元管理職のうち、35.3%が自分の想定していなかった理由でポストを降りていた。およそ3人に1人である。パーソル総合研究所が2026年9月25日に公表した調査の数字だ。
同じ調査には39.1%という数字も出てくる。こちらは退任の説明(内示)が「説明なし」か「1か月以内」だった人の割合で、想定外かどうかとは別の物差しだ。二つを混ぜると「4割近くが想定外」と読めてしまう。この記事では35.3%で話を進める。
この調査は誰に聞いたのか
調査名は「元管理職の社内キャリアに関する調査」である。対象は従業員300人以上の企業で、課長相当以上のライン管理職を経験したあとに退任し、今も同じ会社で働いている50〜64歳。2026年6月のインターネット調査で、元管理職690人などが回答している。調査概要は公表資料では画像になっており、規模と時期は報道記事で確認した。
この対象の取り方が、数字の読み方を決める。管理職を降りたあとに会社を辞めた人は含まれていない。降り方に納得できずに転職した人がいれば、その人たちは最初から分母の外にいる。想定外の退任の実態は35.3%より重いかもしれない。ただしこれは私の推測で、調査が示したことではない。
もう一つ、「想定していたかどうか」は退任後に振り返っての自己申告だ。当時ぼんやり覚悟していた人が「想定通り」と答えることもあるだろう。
どんな降り方が「想定外」だったのか
理由別に分けると、組織改編が目立つ。組織改編による退任は全体の15.2%にとどまるが、そのうち81.0%が「想定外」と答えた。任期満了でも約36%が想定外だった。役職定年や定年・再雇用は約15%と低い。
想定外の退任は、制度ではなく組織改編で起きている
退任理由別に「想定外だった」と答えた割合。従業員300人以上の企業の元管理職50〜64歳、パーソル総合研究所(2026年)
- 組織改編退任全体の15.2%81.0%
- 任期満了約36%
- 役職定年約15%
- 定年・再雇用約15%
- 全体約3人に1人35.3%
任期満了・役職定年・定年再雇用は公表資料の概数
席を作るときに、任期・後任・戻り先という出口も一緒に書いておく。
制度で決まっている降り方は、本人もおおよそ見えている。見えないのは、組織の都合で席そのものがなくなるときだ。組織改編で退任した人の56.2%は、説明なしか1か月以内の内示だった。
報道によれば、元管理職の73.5%は定年や役職定年といった制度による退任を想定していたが、実際に制度で退任したのは57.8%だった。15ポイント余りの人が、予定していなかった出口から出たことになる。
何歳で降りているのか
降りる時期も、本人が思っていたより早いことが多い。退任の時期が「想定通り」だった人は47.8%で、25.1%は想定より早く退任した。54歳以下での退任が35.9%を占め、50代後半、60歳、61歳以上のどれよりも多い。
課長相当で見ると、昇進が平均42.0歳、退任が平均53.9歳で、管理職だった期間は11.1年。65歳まで働くなら、降りてからの期間も11.1年ある。管理職として過ごした年数と、降りてから過ごす年数がほぼ同じになる。試合で言えば、後半は前半と同じだけ残っている。
比較のために公的統計も見ておく。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2025年)では、課長級の平均年齢は49.5歳、部長級は53.1歳だった。母集団が違うので単純には比べられないが、現役課長の平均年齢と元課長の平均退任年齢の差は4年余りしかない。
役職定年という制度そのものは、思われているほど広くない。人事院「民間企業の勤務条件制度等調査」(2017年)では、役職定年制がある企業は16.4%、従業員500人以上の企業でも30.7%だった。古いデータだが、公的調査で企業規模別に確認できる数字として挙げておく。少なくとも年齢で管理職を降りる仕組みは、大半の会社にはない。
降りたあと、何が分かれ目になるのか
退任後の役割は「プレーヤー」が47.2%で最も多く、26.7%は経験のない職種に移っている。退任に向けて特に何も準備しなかった人は37.2%だった。
分かれ目になっていそうなのは、降りたあとの仕事が事前に見えていたかどうかだ。退任後の仕事内容をよく理解していた群では50.8%が職場に高く適応していたのに対し、理解が低い群では21.4%だった。期待される役割を明確に伝えられた群では63.7%、そうでない群では17.2%。相関なので因果までは言えないが、開きは大きい。
管理職の席は、作るときに出口も決めておく
ここからは私の考えになる。日本法人や新しい拠点を立ち上げるとき、管理職ポストの議論は「誰を置くか」で終わりがちである。私はそこに、席の終わり方も一緒に書いておいたほうがいいと考えている。何年でこの席を見直すのか(任期)。誰がいつまでに代われる状態にするのか(後任)。降りたとき本人は何の仕事に戻り、どう評価されるのか(戻り先)。
地方拠点を立ち上げたとき、拠点長にふさわしい人が地元の採用市場にいなかったことがある。そのときは現場のチームを先に採り、拠点長は後から探した。席と人の順番を入れ替えても組織は回った。席は人より先に設計できる。そうであれば、出口も先に設計できるはずだ。
逆に、出口を決めていない席で想定外の交代が起きると、組織の側も長い空白を抱える。日本法人の責任者を入れ替える場合、後任の採用には6〜12か月かかり、紹介手数料も年収の30%前後という通常の相場をかなり上回ることが多い。トップの席を一人に預けきらない設計については責任者を二人置く体制が機能する条件で書いた。後任候補を最初から隣に置いておくのも、出口の設計の一つだと思う。
管理職本人は、自分の降り方を先に描いておく
個人の側でできることもある。まず自社に役職定年や任期の規定があるかを確かめる。16.4%という数字を見る限り、少なくとも役職定年はない会社のほうが多い。規定がなければ、自分の席の終わり方は組織改編のような形でやってくる可能性が高い。
次に、降りたあとにプレーヤーとして出せる成果を、管理職のうちから一つ手元に残しておく。47.2%がプレーヤーに戻るのだから、それは保険というより実際に使う道具だ。60歳以降の再雇用まで含めた条件の変わり方は定年後の再雇用で何が変わるかにまとめてある。
この調査は300人以上の企業で、同じ会社に残った人の声である。中小企業や外資系の日本法人で同じ比率になるかは分からない。外資系では本社主導の組織改編がもっと頻繁だと感じているが、それを数字で確かめたわけではない。
新しく管理職の席を一つ作るなら、職務記述書の最後に「この席の終わり方」の欄を足しておく。任期、後任、戻り先。空欄のまま任命するより、書きかけでも埋めておいたほうが、降りる人も残る人も困らない。
データ出典
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