佐藤伸明 Nobu Sato

中国ゲームは日本でいくら稼ぐか:海外売上の16%

中国自社開発モバイルゲームの海外売上に占める日本の比率が2023年18.87%から2025年16.35%へ下がったことを示す棒グラフ

中国企業が自社開発したモバイルゲームは、2025年に海外で184.78億ドルを売り上げた。そのうち16.35%が日本からで、米国に次ぐ2番目の市場である。一方、2024年に日本で売れたBYDの乗用車は2,223台、新車販売全体の0.05%だった。同じ中国発でも、日本への入り方がまるで違う。

この差は「ゲームは特別だから」で片付けられがちだ。ただ、日本に進出する企業にとっては、売れ方を決めているのが製品より売り場と保守の構造だということを考える材料になる。私はゲームを含むいくつかの業界で組織づくりに関わってきたので、この種の数字を見ると、売上額より先に「この会社は日本に誰を置いているのか」が気になってしまう。

日本からの売上は、推計で約30億ドル

報告そのものは日本向けの金額を出しておらず、比率から推計すると2025年で約30億ドルになる。出典は中国音像与数字出版協会ゲーム出版工作委員会(以下、中国音数協)が2025年12月19日に発表した「2025年中国ゲーム産業報告」(2026年10月時点の最新版)で、データはガンマデータ(伽馬数据)が提供している。

同報告によると、中国の自社開発ゲームの海外売上は2025年に204.55億ドル(前年比10.23%増)、うちモバイルが184.78億ドル(同13.16%増)。モバイルの地域別では米国32.31%、日本16.35%、韓国9.15%で、ドイツ・英国・フランスの合計が8.84%だった。184.78億ドルに16.35%を掛けた約30億ドルは私の計算で、四捨五入された比率からの推計である。

米国日本韓国0%10%20%30%32.51%18.87%8.18%2023年31.06%17.32%8.89%2024年32.31%16.35%9.15%2025年海外モバイル売上に占める比率

Fig.1中国の自社開発モバイルゲームの海外売上に占める日本の比率は、2023年18.87%、2024年17.32%、2025年16.35%と3年続けて下がった。米国は31〜33%で横ばい、韓国は8.18%から9.15%へわずかに上昇。出典:中国音数協ゲーム出版工作委員会「中国ゲーム産業報告」2023〜2025年版(データ:ガンマデータ、報道・転載による)

比率は下がっても、金額はおそらく増えている

比率が下がったからといって、日本市場から人が離れたとまでは言えない。金額ではむしろ増えている可能性が高い。2024年の海外モバイル売上は2025年の数字と伸び率から逆算すると約163億ドルで、日本比率17.32%を掛けると約28億ドル。2025年の約30億ドルはそれより多い。どちらも私の推計だ。

分母にも注意がいる。16.35%は「中国ゲームの海外売上のうち日本から来た分」で、「日本のゲーム市場のうち中国ゲームが取った分」とは別の数字だ。後者に近いものを探すと、Sensor Towerの集計で2024年8月〜2025年7月の日本のモバイルゲーム課金収入(App StoreとGoogle Play)は約110億ドル、日本の発行会社がその52%超を占める。残る5割弱を、米国・韓国・中国などの海外勢が分け合っている。

30億ドルを110億ドルで割れば3割弱になる。ただ、集計主体も方法も違う二つの数字を割っているので、目安以上に使うのはやめたほうがいい。

稼いでいるタイトル

個別タイトルについて公開されているのはSensor Towerの分析が中心だ。中国の業界メディア白鯨出海が転載した分析によると、2024年下半期、miHoYo(『原神』『崩壊:スターレイル』の開発元)は日本の発行会社別売上で3位に入り、『崩壊:スターレイル』は世界売上の38%を日本で得ていた。FirstFunの戦略ゲーム『Last War』は同じ半年に日本で約2億ドルを売り上げ、NetEaseも発行会社別の上位10社に入っている。

一方、中国音数協の2025年版では、海外売上上位100本の中国モバイルゲームのうち戦略ゲーム(SLG含む)が売上の49.96%を占める。日本で話題になるのはアニメ調のRPGだが、売上を支えるもう一つの柱は戦略ゲームだと見ている。

ゲームは入れて、車は苦労する

一番大きいのは、売り場を自分で作らなくていいことだと私は考えている。App StoreとGoogle Playに出せば、全国の端末に同じ日から並ぶ(全国のコンビニの棚を、同じ日に一斉に借りられるようなものだ)。代理店探しも、販売店網も、修理拠点もいらない。代金の回収もプラットフォームがやる。その分の手数料は取られるが、日本で売り場を一から作るよりはるかに速い。

車は逆の条件で戦っている。BYDは2023年に日本で乗用車の販売を始め、2024年は2,223台(日本自動車輸入組合)。前年比54%増で、EVではトヨタの台数を上回った。それでも日本の新車販売442万1,494台(2024年、日本自動車販売協会連合会・全国軽自動車協会連合会)から見れば0.05%で、日本のEV乗用車市場自体も5万9,736台と小さい。車を選ぶ人は、試乗できる店、壊れたときの工場、下取りの値段まで見て決める。そこは人と時間をかけてしか積み上がらない。

中身の作り方も違う。日本で売れている中国作品の多くは、日本語ボイスを日本の声優で収録し、アニメに近い絵柄で作られている。プレイヤーには「中国のゲーム」として意識されにくい。ハードウェアは製品が良くても、販売店での説明や修理対応の質で日本製と並べて比べられる。

代理店経由のハード販売がなぜ思うように進まないかは「代理店が売ってくれないのはなぜか」で書いた。ゲームはその層を丸ごと飛ばせる珍しい業種である。

日本法人に誰を置くか

ゲーム会社の日本拠点は、営業部隊より、運営、マーケティング、ローカライズ、コミュニティの担当を中心に組まれることが多い。売り場がプラットフォームにあるので、日本で必要になるのは「日本のプレイヤーに何をいつ届けるか」を判断できる人だ。

ハードの会社がこの体制をまねると、販売網とアフターサービスの担い手がいないまま立ち上げることになる。日本での最初の一人をどう選ぶかは「日本法人の最初の採用は営業でなくていい」で書いた。業種がどうであれ、売り場と保守を日本で誰が持つのかから人の構成を考えると、判断がぶれにくい。

日本は対内直接投資の残高が小さく、市場は大きいのに入りにくい国だ。ゲームの数字を見ていると、その入りにくさのかなりの部分は「日本に売り場と保守を持つこと」にあるように見える。ただしこれは私の読みで、因果を示す数字があるわけではない。

比率の低下が日本の飽和なのか、中国企業が米国や欧州に力を移した結果なのかも、この報告からはわからない。私が気にしているのは、年30億ドル前後を稼ぐ事業が、日本に販売店を一つも持っていないという点だ。ハードの会社が日本で最初に組む体制を考えるとき、ここから逆算してみる価値はあると思う。


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