佐藤伸明 Nobu Sato

立ち上げ期の日本法人を、本社の型で管理しない

立ち上げ期の日本法人を、本社の型で管理しない

連載「人は組織図どおりには動かない」 · 第6回/全13回 · 第二部 · 構造は行動をどう形づくるか
序章:組織図に載っていない人

日本法人は五人。本社は二千人の会社と同じ十二種類の月次報告を求め、二万円以上の支出は三段階の承認、採用は本社の八回の面接プロセス。法人のトップは時間の半分を書類に使っている。本社はこれをコンプライアンスと呼び、法人は窒息と呼ぶ。どちらも正しい。二つの違う種類の組織を管理しているからだ。

五つの形態、五つの調整の仕組み

ヘンリー・ミンツバーグは1979年に、組織の構造は連続的な目盛りではなく、いくつかの比較的安定した形態であり、各形態は一つの主要な仕組みで仕事を調整している、と提唱した。五つを挙げている。

単純構造。一人が全員を直接監督し、中間層も規則もほとんどなく、その人の判断で調整する。機械的官僚制。標準化された手続きと規則で調整する。大規模製造業や成熟企業の本社が典型。専門的官僚制。標準化された技能で調整する。病院、法律事務所、大学。事業部制。標準化された成果で調整する。本社は各事業部に目標を与え、過程は見ない。アドホクラシー。相互調整で調整する。プロジェクト型、研究開発組織。

この分類は整いすぎていると批判され、現実の組織の多くは混合体で、ミンツバーグ自身ものちに形態を加え名前を変えた。私はこれを分類の道具ではなく、診断用の表として使っている。価値は、各形態に固有の調整の仕組みがあり、仕組みを間違えると組織が止まる、と示している点にある。

単純構造直接の監督1機械的官僚制標準化された手続き2専門的官僚制標準化された技能3事業部制標準化された成果4アドホクラシー相互調整5法人 ← 単純構造 · 本社 ← 機械的官僚制:仕組みが合わない

Fig.1ミンツバーグの五つの形態と調整の仕組み。立ち上げ期の法人は一つ目、本社は二つ目で、二つ目の仕組みを一つ目に被せると不整合が起きる。

本社と法人は別の形態

多国籍企業の本社はほぼ機械的官僚制か事業部制だ。数千人が手続き、標準、報告で動いていて、それがその規模で混乱しない理由でもある。立ち上げ期の日本法人は教科書どおりの単純構造で、数人と一人のトップがいて、調整のすべては、その人が毎日全員と話すことで成り立っている。

機械的官僚制の調整の仕組みは標準化された手続きだ。これを単純構造に被せると、こうなる。手続きのコストは固定で、規模に応じて小さくならないため、五人の法人が二千人の会社の手続きコストを払う。一方、単純構造本来の仕組みであるトップの直接の監督は、書類の時間に押し出される。法人は二つの仕組みのあいだで、どちらも機能しなくなる。

より深い問題は情報だ。機械的官僚制が報告で組織を見るのは、大きすぎて人が見えないからだ。単純構造の情報はもともとトップの頭の中にあり、報告はそれを本社が読める形式に翻訳する作業で、翻訳そのものは新しい情報を何も生まず、時間だけを使う。外資系企業の記事で書いた本社と法人の粒度の違いは、このことだ。

設計上の結論:最初の二年は、別の規則

提案は、本社が統制を手放すことではない。法人が最初の二年は別の形態であることを認め、それに合う規則を与え、いつ切り替えるかを明記することだ。

三つ。一つ、報告は三種類に減らす。現金、顧客、人。それ以外は本社がシステムから自分で取る。二つ、承認の線は本社の絶対金額ではなく法人の規模で決める。五人の法人のトップが自分で決裁できる額は、本社の同格の管理職の数倍であるべきだ。決めることが多く、雑多で、急ぐからだ。三つ、採用プロセスは法人が決め、本社は「採ってはいけない人」の底線だけを決める。最初の数人の採り方は最初の一人の記事に書いた。

切り替え点は明記する。法人が50人を超えるか、二層目の管理者が生まれたら、本社の手続きに段階的に接続する。組織図を描き直すときと同じ時間割だ。

診断への接続

組織診断モデルのパターンの層では、まず組織の形態を決め、使っている調整の仕組みが合っているかを見る。いちばん多い不整合がこれだ。形態は単純構造、仕組みは機械的官僚制。症状は、トップが書類を書き、社員が承認を待ち、仕事が列を作ること。

自社の日本法人は毎月何種類の報告を出し、そのうち本社が本当に読んでいるのは何種類だろうか。

連載
前回:欲しい製品から、チームの形を逆算する
次回:三言語を話す人を、通訳で終わらせない


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