佐藤伸明 Nobu Sato

5人、15人、50人、150人。組織図を描き直すとき

5人、15人、50人、150人。組織図を描き直すとき

連載「人は組織図どおりには動かない」 · 第2回/全13回 · 第一部 · 人はどう群れるか
序章:組織図に載っていない人

日本法人が三人から三十人になっても、トップは三人のときのやり方で動いている。すべて自分が決め、全員が直接自分のところに来る。三十人で詰まり始め、五十人で完全に止まる。多くの人はこれを「トップが権限を手放さない」と片づける。より正確には、組織図を描き直す時期だったのに、それがいつなのか誰も知らなかった、ということだと思う。

一つの数ではなく、連なり

人類学者のロビン・ダンバーは1990年代に、人が安定した関係を保てる人数には上限があり、おおよそ150だと提唱した。この数字はあまりに引用され、唯一の結論のように扱われている。だが研究の中で実務に役立つのは、むしろ連なりのほうだ。最も近しい5人、頼れる15人、よく連絡を取る50人、名前と関係がわかる150人。各層はおよそ前の層の三倍になる。

異論は明記しておく。ダンバー数は霊長類の大脳新皮質の大きさと群れの規模の相関から来ており、人間への適用は外挿だ。2021年には同じデータで再推計し、推定区間が数人から数百人まで広がり、150に統計的な特別さはないとする研究が出た。支持する側は、軍隊の編成、集落の規模、SNS のデータで、これらの層が繰り返し現れると指摘する。

私の使い方はこうだ。150を生物学的な定数とは見なさず、この連なりを経験上の境目として使う。示しているのは、関係を保つ方法を変えなければならない時期であって、数字そのものは前後してよい。

段差ごとに、保ち方が変わる

5人までは、組織は要らない。全員がすべてを知っていて、分担は暗黙でよい。

15人前後が、一つのチームの上限だ。一人がまだ全員の仕事と状態を直接判断できるが、誰が何を見るかは明示する必要が出る。これが一回目の描き直しで、「みんな」から「いくつかの役割」へ変わる。

50人前後で、一人では見きれなくなり、中間層が要る。二回目の描き直しで、いちばん間違えやすい。中間層を置くと、トップの仕事が分割されるというより、情報の濾過層が一枚増える。組織診断で書いている「良い話だけが上がる」は、ほぼこの層で起きる。

150人前後で、互いに知らない人が出てくる。関係で保つ組織はここまでで、以降は制度、等級、文書化された規則で保つ。三回目の描き直しで、「人が人を見る」から「制度が人を見る」へ変わる。

5組織は要らない15一回目みんな → 役割50二回目中間層 = 濾過層150三回目人 → 制度

Fig.1四つの段差、三回の描き直し。箱の数より、関係の保ち方が変わる。数字は経験上の境目で、前後してよい。

設計上の結論:一歩手前で描き直す

組織図はたいてい止まってから描き直され、そのときには半年遅れている。この数字を警戒線として、近づく前に手を打つことを勧めたい。

15人に近づいたら、三つか四つの役割を決め、各役割に責任者を一人置き、トップはその数人だけを直接見る。50人に近づいたら、中間層を任命する前に、何を濾過してよく何を濾過してはいけないかを決め、「必ず上げる三種類の知らせ」を文書にする。150人に近づいたら、等級と給与の規則を書き始める。それまでは人間関係で給与を決めても回るが、以降は必ず問題になる。

日本法人には一つ変数がある。日本の社員は場への帰属意識が強く(前回書いた)、15人以内のチームの結束は欧米の同規模より高くなる一方、50人の段差はより越えにくい。中間層を置くことは、一つの場をいくつかに切ることだからだ。切るときは機能ではなく事業で切り、それぞれの場に完結した仕事を持たせる。

診断への接続

組織診断モデルのパターンの層に「組織の規模と管理の仕方が合っているか」という項目があり、この連なりが私の物差しだ。60人の会社を15人のやり方で動かしていることは、どの管理者個人の問題よりも大きい。二人のトップが機能する条件も、「トップが二人いる組織は、いつうまくいくのか」で規模と結びつけて書いた。

いまの人数は何人で、組織図は何人のときに描いたものだろうか。

連載
前回:「場」でまとまる日本人と、機能別マトリクス
次回:貸し借りの帳簿は、組織図より正直だ

出典:Dunbar (1992) Neocortex size as a constraint on group size in primates、Zhou, Sornette, Hill & Dunbar (2005) Discrete hierarchical organization of social group sizes


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