組織と採用
面接の評価はなぜ「3」に集まるのか
中心化傾向の四つの原因と外し方
佐藤伸明約9分
1995年に発表されたある研究で、仙台、台北、カナダ、米国の高校生五千人あまりが、同じ七段階の質問紙に答えた。真ん中の「4」をいちばんよく選んだのは、日本と台湾の生徒だった。面接の評価シートにも同じことが起きている、と私は感じている。五段階の「3」が並び、誰が良かったのか、シートからは読み取れない。評価が真ん中に寄るこの傾向は中心化傾向と呼ばれ、その原因はいくつかに分けて手当てできる。
「3」が並ぶと、何が困るのか
候補者の間に差がつかなくなる。採用は何人かのなかから選ぶ作業なので、全員が3なら、評価シートは面接官の印象に戻ってしまう。
構造化面接は、人を選ぶ方法のなかでも当たりやすい部類に入る。Paul Sackettらが2022年にJournal of Applied Psychology誌で選考手法のメタ分析をやり直したところ、構造化面接の平均妥当性は0.42で、比べた手法のなかで最も高かった。認知能力テストは0.31に下がっている。ただ、この数字には前提がある。面接官のつける点が、候補者の間で実際に開いていることだ。質問をいくら整えても、点が3に固まっていれば、そこから先は何も計算できない。
中心化傾向は、統計上の小さな癖のように見えて、よくできた方法を勘に戻してしまう。
点を真ん中に引き寄せているものは何か
私は四つに分けて考えている。間違いを恐れること、物差しがないこと、尺度に真ん中があること、あとで説明しなければならないこと、である。たいてい同時に働いている。
まず、間違いへの恐れ。5をつけた人が入社してうまくいかなければ、見誤ったのは自分だ。1をつけた人が競合で活躍しても、やはり自分の見誤りになる。3なら、どちらに転んでも大きくは外れない。一人で判断し、一人で責任を負う形だと、3はいちばん安い保険になる。
次に、物差しがないこと。シートには「1 不十分、3 普通、5 優秀」とある。では普通とは誰と比べての普通か。直前の候補者か、いまのチームの誰かか、頭のなかの理想の人か。面接官ごとに物差しが違い、迷ったときは皆が真ん中に寄る。真ん中なら、どの物差しからもそれほど遠くない。
三番目は尺度そのものだ。奇数の尺度にはちょうど真ん中があり、そこは正当に態度を保留できる場所になる。冒頭の研究はこれを文化の違いとして見ている。Chuansheng Chen、Shin-ying Lee、Harold Stevensonの三人がPsychological Science誌に発表したもので、仙台の944人、台北の1,357人、カナダの687人、米国の2,174人の高校生に、57項目の七段階尺度で答えてもらった。日本と台湾の生徒は北米の二つの群より真ん中を選ぶことが多く、米国の生徒は両端を最もよく選んだ。どの群でも、個人主義に共感する人ほど真ん中を選ばなかった。差は小さいが、統計的には有意だったという。
日本の回答者が「どちらともいえない」を選びやすいことは、「どちらともいえない」は、答えになっているに書いた。面接の評価シートも質問紙の一種で、答えるのが面接官に代わっただけである。
四番目が見落とされやすい。あとで説明しなければならない、ということだ。Neal MeroとStephan Motowidloが1995年にJournal of Applied Psychology誌に発表した実験では、247人の大学生が模擬の部下四人の仕事ぶりを見て評価した。理由を実験者に文書で説明するよう求められた群は、より正確に評価した。ところが同じく説明を求められた人でも、「この部下たちの以前の評価は低すぎた」と聞かされると、評価が甘くなった。
説明責任は人を丁寧にする。同時に、誰に説明するのか、相手が何を聞きたがっているのかが、点をその方向へ押す。採用会議に置き換えると、5をつければ会議で理由を話す必要があり、1をつければ問い返される覚悟がいる。3なら何も話さなくてよい。真ん中に寄るのは、その説明の場を避けている面がある。
評価が真ん中に寄るのは四つの力が重なるからで、それぞれに外し方がある
左は面接官が採点するときによく浮かぶ考え(例示)、中央は原因で、Chenら(1995)、MeroとMotowidlo(1995)による。右は筆者のやり方で、行動アンカー評定尺度(SmithとKendall、1963)以外は研究で確かめられたものではない
真ん中の点は、説明のいらない点である。どの段階にも説明を求めれば、真ん中は安くなくなる。
真ん中を「高くつく」選択に変える
原因が四つなら対策も四つになるが、考え方は一つでよい。真ん中が多いのは、真ん中がいちばん安いからだ。高くすれば、分布は自然に開く。断っておくと、以下の四つは私のやり方である。行動アンカー評定尺度には研究の出どころがあるが、残りを直接確かめた研究は見つけていない。
物差しがないなら、物差しを渡す。行動アンカー評定尺度(BARS)は、Patricia Cain SmithとLorne Kendallが1963年にJournal of Applied Psychology誌に発表した論文にさかのぼる。各段階を具体的な行動で書き、さらに別の人たちに行動の例を各次元へ振り分け直してもらい、元に戻らない例は捨てる。たとえば「プロジェクトの推進」なら、3は「普通」と書かず、「計画どおりに進め、計画外の問題は上司が出る必要がある」と書く。5は「計画外の問題も自分で調整し、あとで上司に報告する」。3をつけるなら、候補者のどの話がこの一文に当たるのかを言えなければならない。
説明を避けたくなるなら、すべての点に説明を求める。点の横には観察した事実を一つ書く、と決める。候補者が言ったこと、やったことで、面接官の感想は入れない。3にも書く。この決まりがあると、3を書く手間は5と同じになり、面接官はかえって両端をつけやすくなる。
尺度に真ん中があるなら、私は外して四段階にしている。どちらかに寄せるしかなくなる。これは私の習慣で、研究の結論ではない。真ん中を外すと面接の評価が正確になる、と示した研究は見つけられていないし、無理に選ばせた方向はただの雑音かもしれない。だから一つ足している。本当に判断がつかないものは「要検証」と書いて点をつけず、次の面接で聞く問いにする。人と職位は合うのか:五段階判定で、わからない層は真ん中の点で埋めないと決めているのと同じ理屈である。
間違いが怖いなら、責任を分ける。面接官は他人の点を見ずに各自で出し、そのあと較正の会議を開く。最初に、各面接官の過去一四半期の点の分布を並べて見て、候補者の話はそのあとにする。ある面接官の九割が3なら、その人の3は少し割り引いて聞けばよい。判定は会議全体で負い、一人の面接官に背負わせない。
日本の面接官の「3」には、もう一枚の層がある
ここからは観察で、裏づけの数字はない。
日本の面接官は、書面で言い切ることを避けがちだと感じている。とくに否定的なことは書きたがらない。評価シートは人事が読み、候補者の将来の上司が読むかもしれない。紙の上の1は、責任を持たなければならない断定になる。だから日本の3には、いろいろなものが入っている。本当の「普通」もあれば、「気になる点はあるが書きたくない」もあり、「そこは聞けていない」もある。
ここで面接官を責めても、たぶん何も変わらない。尺度と会議の形がそう答えさせているのだから、変えるのは形のほうだ。1をつけるよう迫るより、さきほどの決まり、事実を一つ書いてもらうほうがうまくいくことが多い。断定を嫌う面接官でも、事実の描写はていねいで、候補者が何をどう話したかを細かく覚えている(評価シートの点より、余白のメモのほうが情報が多いことはよくある)。
その描写から証拠を拾う手順は、書類選考のあと、面接で私が探しているものに書いた。
手始めにできることがある。各面接官が過去一四半期につけた点を集め、3の割合を出してみる。公表しなくてよい。いちばん3が多い人の面接記録を、一度読んでみるといい。点には出ていなかった判断が、たいていそこに書いてある。
出典(2026年11月時点)
- Chen, Lee & Stevenson, "Response Style and Cross-Cultural Comparisons of Rating Scales Among East Asian and North American Students," Psychological Science 6(3), 1995
- Mero & Motowidlo, "Effects of Rater Accountability on the Accuracy and the Favorability of Performance Ratings," Journal of Applied Psychology 80(4), 1995
- Smith & Kendall, "Retranslation of Expectations: An Approach to the Construction of Unambiguous Anchors for Rating Scales," Journal of Applied Psychology 47, 1963(Bowling Green State University 書誌)
- Sackett, Zhang, Berry & Lievens, "Revisiting the design of selection systems in light of new findings regarding the validity of widely used predictors," Industrial and Organizational Psychology 16(3), 2023(2022年のメタ分析の報告)