佐藤伸明 Nobu Sato

日本の労働市場レポート 2026

エグゼクティブサマリー

2026年後半の日本の労働市場は、極めて低い失業率、採用需要の鈍化、ほぼ上限に達した労働供給、そして約30年ぶりのペースで上昇する賃金という組み合わせにあります。経営層が押さえるべきポイントは次の5つです。

  1. 需要は鈍化しても、人手不足は構造的。 失業率2.5%、有効求人倍率は2023年の1.31倍から2026年8月に1.18倍へ低下。一方で企業の人手不足感は近年で最も強く、2025年の人手不足倒産は過去最多の427件。
  2. 供給の伸び代は尽きつつある。 2025年に労働力人口は初めて7,000万人を超えたが、女性と高齢者の参加拡大によるもの。出生数は67.1万人に減少し、2040年までに生産年齢人口は約1,100万人減る。外国人労働者(257万人、+11.7%)が就業者純増の半分超を担う。
  3. 賃金水準は新たな段階へ。 春闘賃上げ率は3年連続で5%超(2026年は5.01%)。2026年は実質賃金が毎月プラス。最低賃金は時給1,177円となり、5年で累計26.6%上昇。
  4. 人材紹介・派遣業界は過去最大だが、二極化が進む。 FY2024の人材紹介手数料収入は9,835億円(+17.6%)、派遣売上高は9.9兆円(+9.4%)。成長はハイクラス、IT・デジタル、プラットフォーム型に集中。医療系紹介には手数料上限の可能性。
  5. AIは入り口を狭めているが、雇用削減には至っていない。 政府はAIによる大規模な雇用減少の証拠はないと判断。ただし事務職の求人は大幅に減少し、主要企業の23%が2027年度の新卒採用を削減予定。選考は書類からAI面接へと移行中。
指標最新値時点
完全失業率2.5%2026年8月
有効求人倍率1.18倍2026年8月
労働力人口7,004万人2025年平均
外国人労働者257万人(+11.7%)2025年10月末
春闘賃上げ率(連合)5.01%2026年
最低賃金(全国加重平均)時給1,177円2026年度
人材紹介手数料収入9,835億円(+17.6%)2024年度
労働者派遣売上高9.90兆円(+9.4%)2024年度

各数値の出典は各章に記載しています。

労働市場の現状

失業率2.5%、採用需要は緩やかに低下

2026年8月の完全失業率は2.5%、2年以上にわたり2.4–2.7%の範囲で推移しています(総務省 労働力調査)。就業者は6,849万人。有効求人倍率は1.18倍、新規求人は前年同月比3.4%減(厚生労働省 2026年8月分)。低下の要因は求人の減少であり、求職者の増加ではありません。

1.001.502.001.00=求人数と求職者数が同数● 有効求人倍率● 新規求人倍率1.311.182.062020202120222023202420252026/8

Fig.1有効求人倍率は2023年の1.31倍から2026年8月の1.18倍へ低下。2020–2025年は年平均、2026年8月は季節調整値。 出典:JILPT 主要労働統計指標 0208(2020–2025年平均)、厚生労働省「一般職業紹介状況」2026年8月分

正社員の有効求人倍率は2025年8月以降、1.00倍で横ばい。東京は1.70倍(受理地別)と最も高い水準です。なお、ハローワーク経由の入職は現在約10%(2009年は約30%)にとどまるため、この指標はホワイトカラーの需要を過小評価しています(労働経済白書 令和7年版)。

企業の人手不足感は依然として強い

2026年9月の日銀短観で、雇用人員判断DIは−38、中小企業は−42と統計上最も不足側です(日本銀行 短観)。51.3%の企業が正社員不足と回答し、金融(67.1%)、建設(66.0%)、運輸・倉庫(65.6%)が上位です(帝国データバンク 2026年7月)。

人手不足倒産は2025年に過去最多の427件(+24.9%)、2026年上半期は227件です(帝国データバンク)。要因は「採用できない」から「人件費高騰に耐えられない」へ移り、直近では54%を占めます(東京商工リサーチ)。

正社員化が進む一方、転職希望者は過去最多

2025年の正規の職員・従業員は11年連続で増加し3,708万人。非正規比率は2026年8月に36.3%まで低下しました(総務省)。実際の転職者は330万人ですが、転職等希望者は過去最多の1,023万人で、約3倍の差があります(総務省)。この差が人材業界にとっての主要な潜在市場です。

不足は現場系職種に集中

職業有効求人倍率(2026年8月)
保安6.99
建設・採掘5.10
介護サービス3.89
医療技術者3.21
自動車運転2.54
情報処理・通信技術者1.33
事務0.37
職業計1.06

出典:厚生労働省 参考統計表 2026年8月。ITはハローワークの数字では緩やかに見えますが、情報サービス業の66.7%が人手不足を訴えており、採用は主に民間チャネル経由です(帝国データバンク 2026年4月)。

政策:労基法の大改正は先送り

労働基準法の大改正(勤務間インターバル義務化、連続勤務日数の上限など)は2026年の通常国会に提出されず、2027年まで労働時間ルールは大きく変わらない見通しです(jinjer)。65歳までの雇用確保は2025年4月に完全義務化されましたが、70歳までの就業機会を確保する企業は34.8%にとどまります(厚生労働省)。

労働力の供給

人口は1億2,297万人、減少が続く

2025年国勢調査による総人口は1億2,297万人で2020年比317万人減(−2.5%)、増加したのは東京都のみです(総務省 令和7年国勢調査)。生産年齢人口(15–64歳)は7,348万人(59.8%)、65歳以上は29.4%。5年間で日本人は3.4%減、外国人は44%増の346万人となりました。

社人研の将来推計(出生中位)では、生産年齢人口は2030年7,076万人、2040年6,213万人、2050年5,540万人となります(IPSS、二次資料)。2025–2040年の減少は約1,100万人です。

労働参加率の上昇が支えてきたが、限界が近い

2025年の労働力人口は初めて7,004万人に達し、労働力人口比率は63.8%です(総務省 2025年平均)。2015年以降、生産年齢人口が400万人超減ったのに対し労働力人口は379万人増え、その全てが参加率の上昇によるものです。

  • 女性: 25–34歳の労働力率は88.4%で、いわゆる「M字カーブ」はほぼ解消。残る課題は「L字カーブ」で、女性の正規雇用比率は25–29歳の62.8%をピークに低下します(男女共同参画白書 令和8年版)。
  • 高齢者: 65歳以上の就業者は943万人(就業者の13.8%)、65–69歳の就業率は54.5%です(総務省)。ただ、76%が非正規で、年間増加は13万人に鈍化しています。

新卒:2043年には4割減

2025年の出生数は671,236人で10年連続で過去最少、合計特殊出生率は1.14です(厚生労働省 人口動態統計)。現在の18歳人口は約109万人で、2043年には約67万人になります。

2027年卒の大卒求人倍率は1.62倍、2年前の1.75倍から低下しました。従業員5,000人以上の企業は求人を増やし(+4.0%)、中小企業は減らしています(−3.5%)(リクルートワークス研究所)。就職率は98.0%を維持しています。

不足の見通し:2040年に最大1,100万人

機関推計方法2030年2035年2040年
リクルートワークス研究所需給ギャップ(人数)341万人不足—1,100万人不足(需要の24%)
パーソル総合研究所労働時間—1日1,775万時間不足(約384万人)—
JILPT 成長・参加進展シナリオ就業者数6,858万人—6,734万人
JILPT 現状シナリオ就業者数6,430万人—5,768万人

2040年の姿は、参加率がさらに4–5ポイント上がるかどうかで決まります。不足が最も大きいのは介護(25%)、販売(25%)、ドライバー(24%)、建設(22%)で、事務・技術・専門職は7%にとどまり2030年には過剰の可能性もあります。不足が生じないのは東京都のみで、2025年の東京圏転入超過は123,534人、30年連続です(総務省 住民基本台帳人口移動報告)。

賃金と所得

春闘:3年連続で5%超

2026年春闘の連合最終集計は5.01%(月額16,400円)で2025年の5.25%をやや下回りました(連合最終集計)。中小組合は4.69%で、比較可能な2013年以降で最高です。ベア分は約3.5%です。

2%3%4%5%5%=連合の要求水準● 全体● 中小2.075.105.255.014.6920192020202120222023202420252026

Fig.2春闘賃上げ率(連合、%)は3年連続で5%超。中小は2023年以降。 出典:厚生労働省掲載 連合集計図表(2019–2026)、連合 2026年最終集計

他の調査も同様の傾向です。経団連の大手企業集計は5.37%(19,752円、1976年以来最高額)で、情報通信8.28%、建設6.76%が上位、金融は2.97%にとどまりました(JILPT 2026年10月号)。労組のない企業を含めると、経済全体の賃上げ率は4.4%程度です(第一生命経済研究所)。

実質賃金はプラスに転換

2022–2025年は物価上昇が賃上げを上回り、実質賃金は4年連続でマイナスでした。2026年は8月まで毎月プラス(8月+1.5%)で、名目賃金は+3.8%です(厚生労働省 毎月勤労統計)。パート時給は最低賃金引き上げを受けてより大きく上昇(+4.3%)。年末にはコア物価が3%を超え、実質賃金が一時的にマイナスに戻る可能性があります(第一生命経済研究所)。

最低賃金:1,177円、毎年約5%上昇

9029309611,0041,0551,1211,177FY2020FY2021FY2022FY2023FY2024FY2025FY2026

Fig.3最低賃金の全国加重平均(円/時)。2021年度から2026年度で26.6%上昇。 出典:厚生労働省 令和8年度地域別最低賃金、FY2020–FY2025は補助金ポータル整理

東京都は1,280円、最低の県は1,085円です(厚生労働省)。2026年7月、政府は1,500円目標を「2030年代前半」に先送りしました。従業員100人未満の事業所では、約42.5%の労働者が改定前に新最低賃金を下回っていたと推計されています(信金中央金庫)。

中途採用と高所得層

正社員の平均年収は429万円(中央値384万円)。プロジェクトマネジャー707万円、経営企画703万円、人事549万円、SE・プログラマ435万円です(doda 平均年収ランキング)。

年収1,000万円超は給与所得者の6.6%(約340万人)にすぎません(国税庁)。その約7割が転職を通じてこの水準に達しています(JAC Recruitment調査)。大手エージェント経由の転職者は賃金上昇幅が大きく、35.8%が10%以上増加(リクルートエージェント)、転職者全体では26.7%です(厚生労働省)。50歳以上の転職では減収が多く、50–54歳の44.7%が減少しています。

企業規模・業種間の格差

2025年の一般労働者の月額賃金は過去最高の340,600円(+3.1%)ですが、大企業+5.7%に対し中企業は+1.0%です(厚生労働省 賃金構造基本統計調査)。プライム上場企業の大卒初任給は5.3%増の265,708円で、先行企業は30–37万円を提示しています(労務行政研究所)。

産業所定内給与(千円、2025年6月)
電気・ガス・熱供給・水道444.0
学術研究・専門技術サービス440.3
金融・保険437.0
情報通信406.0
製造330.0
医療・福祉315.7
運輸・郵便312.7
宿泊・飲食サービス277.2

出典:厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査。経団連は年功型賃金から職務・役割給(ジョブ型)への移行を会員企業に促しています(JILPT)。

人材紹介・エグゼクティブサーチ市場

規模:手数料収入9,835億円、約1.4万の事業所に分散

有料職業紹介の2024年度手数料収入は9,835億円(+17.6%)、常用就職件数は88.9万件、1件あたり平均手数料は約103万円(+10.9%)です(厚生労働省 令和6年度職業紹介事業報告)。2025年度の公式データは2027年3月公表予定です。矢野経済研究所はホワイトカラー職種の紹介市場を4,490億円(+12.0%)と推計しており、差分の多くは医療・介護・保育分野です(矢野経済研究所)。

3,225億3,487億5,240億9,835億FY2013FY2014FY2017FY2018FY2019FY2020FY2021FY2022FY2023FY2024データなし

Fig.4有料職業紹介事業の手数料収入(億円)、2013–2024年度。2015–16年度はデータなし。 出典:厚生労働省「職業紹介事業報告」手数料収入の推移(FY2013–FY2024)

市場は高度に分散しています。報告事業所30,561のうち成約実績があるのは13,946で、23,713事業者が1事業所のみです(厚生労働省)。2024年度は求職申込が4割超増えた一方で成約は5.3%増にとどまり、プラットフォーム化で登録数が膨らむ一方、成約率は低下しています。

主要プレーヤー:プラットフォーム型とハイクラス特化型が総合型を上回る成長

企業直近規模注力領域直近の動き
リクルート(リクルートエージェント)HRテクノロジー日本 FY2025 1,189億円(求人広告含む)総合型下期に人材紹介の回復を見込む(IR)
パーソルキャリア(doda)Career SBU 2027年3月期Q1 387億円(−1.7%)、人材紹介−5.0%総合型、年収600万円超ID統合でユーザー流出;副業・フリーランス事業+29%(IR)
JACリクルートメントFY2025 売上461億円(+17.7%)、コンサルタント1,722人年収800–1,500万円、外資系エグゼクティブ+31%、デジタル+45%;FY2026は+15%計画(IR)
ビジョナル(ビズリーチ)FY2025 売上802億円(+21.2%)ハイクラス型スカウト導入企業36,300社、ヘッドハンター8,400人、会員293万人(IR)
エン・ジャパン(紹介事業)2026年3月期 109億円(+9.4%)ミドル層、AMBI他社エージェントが同社DB経由で220–300億円を成約(レポート)
ロバート・ウォルターズ、マイケル・ペイジ、ヘイズ日本単体は非開示外資系専門サーチ2026年の需要職種:FP&A、PE・オルタナティブ、HRBP、薬事・品質(給与調査)

上場専門系の合計は手数料総額の約12%にすぎず、リクルートとパーソルを加えても上位5–6社で約20–30%です。残りは約1.4万の中小エージェントに分散しています。

手数料:成功報酬30–35%が標準

成功報酬は理論年収の30–35%が一般的で、届出上は50%まで可能です。返金規定は入社1か月以内80%、3か月以内50%、6か月以内10%が一般的です(リクルートエージェント)。求職者からの手数料徴収は、年収700万円超の経営管理者等を除き禁止されています。

医療分野は例外です。平均手数料率は20–25%(医師22.0%、看護21.6%、介護20.2%)、病院側の満足度は5点満点中2.3–2.5です(日本医師会・四病協;厚生労働省調査)。同分野の手数料は2023年度で1,061億円です。

規制:参入障壁は低いが、コンプライアンス要件は強化

許可要件は1事業所あたり純資産500万円、現金150万円と専属の職業紹介責任者の配置です(厚生労働省)。主な変更点:

時期内容影響
2025年1月お祝い金支給・2年以内の転職勧奨の禁止が許可条件に全事業者
2025年4月職種別平均手数料率の公開義務(厚生労働省)手数料の透明化
2026年1月職業紹介責任者の兼任を条件付きで緩和(厚生労働省)多拠点展開のコスト低下
2026年3月医療団体が手数料上限と返戻金義務化を要望(要望書)厚労相は「慎重に検討」、未立法
2026年9月業務運営要領で職業紹介と募集情報提供の区分を明確化(JESRA)スカウト・AI型サービスのグレーゾーン
2026年10月カスハラ・求職者ハラスメント対策の義務化(JESRA)求人受理の新条件

手数料上限導入の可能性は高まっており、まず医療・介護・保育の3分野からと見られます(しんぶん赤旗 2026年6月)。

構造変化

  • ダイレクトリクルーティングがシェアを拡大。 2024年度は約1,275億円で年19–23%成長し、紹介全体を大きく上回ります(矢野経済研究所)。
  • エージェントは求職者の確保に苦戦。 81.8%が求職者確保を最大の課題に挙げ、2026年4–6月の業況DIは9.0に低下(JESRA QPI)。中小エージェントは有料データベースに依存し、利益の多くをプラットフォームが得ています。
  • 求職者は複数登録。 73%が2社以上に登録し、内定承諾時に紹介会社を利用したのは16%です(マイナビ)。
  • 医療分野は二極化。 2024年度は介護の成約が25–29%増、医師(−18%)と看護師(−10%)は減少しました(厚生労働省)。

2026–2030年の人材紹介市場に関する公的な予測は公表されていません。

人材派遣市場

規模:9.9兆円、成長は人数より単価主導

労働者派遣事業の2024年度売上高は9.90兆円(+9.4%)、派遣労働者は約220万人(+3.9%)です(厚生労働省 令和6年度派遣事業報告)。矢野経済研究所は9.32兆円と推計し、派遣・紹介・再就職支援の合計は2025年度に10兆円を超えると予測しています(矢野経済研究所)。

7.6兆8.2兆8.8兆9.1兆9.9兆FY2020FY2021FY2022FY2023FY2024

Fig.5労働者派遣事業の年間売上高(兆円)、2020–2024年度。 出典:厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」令和2–6年度

労働力調査の派遣社員は2026年4–6月期で158万人(雇用者の約3%)で、年度末の報告数ではなく時点の就業状況を測るため少なく出ます(総務省)。無期雇用派遣の比率は2020年度の37%から41%に上昇しました。

料金:IT技術者は事務のほぼ2倍

2024年度の平均派遣料金は8時間換算26,257円(+3.6%、過去5年で最大の伸び)、派遣労働者の賃金は16,735円(+3.4%)です。税抜きのマージン率は約30%で、社会保険料(約11%)と諸経費(約14%)を差し引くと営業利益率は1–6%程度です(厚生労働省 マージン率資料)。

職種(8時間換算、円、2024年度)派遣料金派遣労働者の賃金
情報処理・通信技術者34,38221,032
建築・土木・測量技術者34,16821,429
製造技術者28,51817,724
看護師23,42815,913
一般事務18,11212,231
製品製造・加工16,88311,406
介護サービス16,28211,093

出典:厚生労働省 令和6年度派遣事業報告。2025年には派遣先の77.9%が値上げを受け入れました(日本人材派遣協会)。

プレーヤー:大手3社は堅調、技術者派遣大手は非上場化

企業直近規模領域直近の動き
リクルート(国内派遣)FY2025 8,468億円(+5.2%)総合FY2026計画+7.5%(IR)
パーソル(Staffing SBU)2027年3月期Q1 1,583億円(+3.4%)総合就業者数は横ばい、請求単価+2.5%(IR)
テクノプロFY2025/6 2,390億円(+9.0%)、技術者30,575人技術者派遣2025年12月、ブラックストーンが約5,074億円で非上場化(日本M&Aセンター)
アウトソーシング(現BREXA)—技術者・製造2024年6月、ベインキャピタルのMBOで上場廃止(開示)
UTグループ2026年3月期 1,669億円、営業利益+31.5%製造派遣中期計画を下方修正、人材紹介に参入(IR)
フルキャスト2025年12月期 772億円(+12.6%)短期・日雇ハイクラス紹介事業を買収、HRテック部門を新設(IR)
タイミー2025年10月期 343億円、登録者1,420万人スポットワーク年収30%の紹介サービスを開始(IR)

派遣・紹介・スポットワークの境界は急速に曖昧になっており、派遣会社もスポットワーク事業者も正社員紹介へ参入しています。

規制:大改正はないが、同一労働同一賃金は厳格化

労働者派遣法の大規模改正案は国会に提出されていません(厚生労働省)。2026年10月から、待遇差の説明を求める権利の書面明示が義務化され、同一労働同一賃金ガイドラインに退職金・家族手当・住宅手当などが追加されました(解説)。スポットワークは直接雇用として扱われ、応募時に契約が成立し、キャンセル時には休業手当が必要です(厚生労働省通達)。

供給と見通し

登録者数は2年連続で減少し、2024年度は753万人。一方で派遣先件数は7.9%増え、これが料金上昇の主因です(厚生労働省)。2025年度の派遣業の人手不足倒産は過去最多の12件でした。成長分野はおおむね、技術者派遣(数量・単価とも上昇)、建設施工管理、半導体製造、介護の順で、事務派遣は単価上昇・数量横ばいです。自動車製造や軽作業は関税とスポットワークの影響を受けています(矢野経済研究所)。

外国人労働者:政策と社会の受け止め

257万人、出身国は南アジア・東南アジアへ多様化

2025年10月末の外国人労働者数は2,571,037人(+11.7%)で、13年連続で過去最高です(厚生労働省)。増加の中心は専門的・技術的分野で、特定技能は38.3%増の28.6万人、技術・人文知識・国際業務は13.8%増の46.8万人です。

国籍(2025年10月末)人数構成比増加率
ベトナム605,90623.6%+6.2%
中国431,94916.8%+5.7%
フィリピン260,86910.1%+6.2%
ネパール235,8749.2%+25.7%
インドネシア228,1188.9%+34.6%
ミャンマー163,3116.4%+42.5%
ブラジル134,6455.2%−1.1%

出典:厚生労働省 別添3。産業別では製造業(63.5万人)が最多、医療・福祉(+25.6%)の伸びが最大です。雇用事業所の63%が30人未満です。2026年6月末の在留外国人は428万人で、総人口の3.4%です(共同通信)。

在留制度:受入れ上限123万人、一部分野では上限に到達

2026年1月の閣議決定で、特定技能の対象は19分野に拡大し、2029年3月末までの受入れ見込数は特定技能805,700人、育成就労426,200人、合計1,231,900人とされました(LNEWS)。

分野人手不足数特定技能育成就労合計
工業製品製造業683,700199,500119,700319,200
建設360,00076,000123,500199,500
飲食料品製造業288,400133,50061,400194,900
介護259,300126,90033,800160,700
農業389,00073,30026,30099,600
外食業256,00050,0005,30055,300
自動車運送業287,90022,100—22,100
19分野合計—805,700426,2001,231,900

出典:出入国在留管理庁。外食業は上限に達した最初の分野となり、2026年4月13日から在留資格認定証明書の交付を停止しています(入管庁)。

育成就労制度は2027年4月1日に技能実習制度に代わって始まります。本人意向による転籍は1–2年経過後に限られ、民間の職業紹介事業者は介在できません(厚生労働省)。この市場は人材紹介会社には開かれていません。

永住制度は厳格化

高市内閣は2026年1月の総合的対応策で「秩序ある共生」を基調としました(首相官邸)。主な変更点:

  • 永住許可: 2027年4月から、引き続き10年の在留、日本語B1相当、同規模の日本人世帯の平均を上回る世帯収入、年金の納付実績が必要に(入管庁 永住許可ガイドライン)。
  • 帰化: 2026年4月から居住要件を5年から10年に延長。
  • 手数料: 永住許可手数料は2026年10月に1万円から20万円へ。在留期間更新は最大7.5万円。
  • 納付状況: 2027年6月から、国民健康保険料の長期未納者は原則として更新不許可。
  • 経営・管理ビザ: 要件厳格化後、2026年上半期の新規入国者は80.9%減(共同通信)。

企業は慎重、ホワイトカラーは日本語力が鍵

外国人を雇用している企業は24.7%ですが、新規・拡大を予定する企業は14.3%で2.4ポイント低下しました。課題は日本語教育とコミュニケーションで、それぞれ約56%です(帝国データバンク)。特定技能の所定内給与は約21.1万円で、一般労働者の33.0万円を下回ります(入管庁)。

ホワイトカラーでは、留学生は40.8万人(+21%)に達したものの、国内就職率は37.9%で、初任給は20–25万円が中心です(JASSO)。

世論は慎重に傾いている

調査時期設問結果
時事通信2024年4月→2026年5月外国人労働者の受入れ拡大に賛成71.8%→58.2%
読売・早稲田2025年9–10月外国人労働力の積極的受入れに反対59%(2024年は46%)
東京大学社研パネル2024年→2026年定住型外国人の増加に反対35.6%→56.3%
早稲田POPIP2025年11–12月外国人の増加で治安が悪化する73%

世論は短期の労働者と定住型の移民を区別しており、労働者の拡大にはなお過半数が賛成しますが、定住の拡大には反対が多数です。意外にも、40歳未満で懸念が最も急速に高まっています。参政党は「日本人ファースト」を掲げて2025年参院選で14議席を獲得、2026年2月の衆院選では高市総理率いる自民党が316議席を得ました(東京財団)。高市総理は「いわゆる移民政策は絶対推進していない」とする一方、排外主義とは一線を画すとしています。

国際比較:日本の魅力は低下

日本の外国出身者比率は約3%で、ドイツ約20%、米国15%、OECD平均11.5%を大きく下回ります(ニッセイ基礎研究所)。2026年上半期、ベトナムからの送り出しは台湾(2.82万人)と日本(2.85万人)がほぼ並び、同国政府は円安を要因に挙げています(Dan Tri)。日本はインドネシア、ミャンマー、ネパールからの受入れを強めています。

AIの影響

導入率:測り方次第で8%から86%まで

生成AIの導入率は調査により大きく異なります。「社内のどこかで使用」から「従業員が毎日使用」まで、測っているものが異なるためです。

調査時期対象指標結果
総務省 情報通信白書2026年1–2月デジタル化した企業515社いずれかの業務で使用86.4%(2024年は55.2%)
パーソルキャリア2026年5月売上1,000億円以上企業の部長級AIエージェントを実務で使用48.3%
帝国データバンク2026年3月10,312社業務で使用34.5%(大企業46.5%、小規模28.0%)
東京商工リサーチ2026年4月6,327社全社的に推進20.3%
リクルートワークス研究所2025年末労働者毎日使用8.9%

日本は主要国に遅れています。個人の生成AI利用経験は58.8%で、米国・ドイツの75.6%、中国の93.6%を下回ります。企業による研修も少なく、金融業では日本26.9%に対し米国60.5%です(労働経済白書 令和8年版)。2026年時点のAIの影響は大企業のホワイトカラー業務に集中しています。

雇用:縮むのは入り口であり、既存の雇用ではない

令和8年版労働経済白書は、2025年12月時点でAIによる大きな雇用減少の証拠はないと判断しています(厚生労働省)。ただし2025年半ば以降、具体的な兆候が現れています。

  • 事務職の求人が減少。 2025年7月の事務職求人広告は前年比約16%減で職種別最大の減少幅。別の集計では2026年2月に43.8%減、一方IT専門職は10.6%増です(ロイター;ロバート・ウォルターズ)。
  • 大企業で新卒採用を削減。 主要111社のうち2027年度に新卒を「減らす」は23%で、「増やす」16%を上回り5年ぶりに逆転。三菱電機はAI導入を理由に新卒採用を約22%削減しました(共同通信)。
  • 早期・希望退職は増加、ただしAIが理由とはされていない。 2025年度の上場企業の募集は20,781人(約2.5倍)、その7割が黒字企業ですが、AIを理由に挙げた企業はありません(東京商工リサーチ)。

反対の証拠もあります。大卒求人倍率は1.62倍を保ち、AI人材の需要は急拡大しており、年収1,000万円超のAI関連求人は3年で約3.5倍です。経済産業省は2040年に事務職が約440万人過剰、AI・ロボットを使いこなす人材が約340万人不足と推計しています(厚生労働省)。若年卒業者が最も影響を受ける米国と異なり、日本で影響を受けやすいのは大企業の文系事務職新卒と余剰な中高年層です。

採用テクノロジー:書類選考が機能しなくなっている

HRテッククラウド市場は2025年度に約1,690億円(+22%)です(ミック経済研究所)。人事領域でAI・HRテックを使う企業は大企業74%、小規模企業26%です(HR総研)。

求職者のAI利用が変化を迫っています。2027年卒で就活に生成AIを使わない予定の学生は3%にすぎません(2年前は55%)。AI面接を導入した企業の86.7%が、書類で差がつかなくなったため書類選考を緩和または廃止しています(HR総研;レバレジーズ)。日本の求職者は比較的受容的で、AI選考で応募意欲が大きく下がるのは11%(世界平均23%)です(SIA)。

人材紹介会社にとって、AIはソーシング・スクリーニング・アプローチのコストを限りなくゼロに近づけています。2026年には複数のAIネイティブなプラットフォームが、成功報酬なしの月額制ソーシングツールを提供し始め、コンサルタント向けAIコパイロットも登場しました(innovaTopia;BCN)。大手人材紹介会社の収益がAIで減少したという確たるデータはまだありません。

規制上の線引きは未確定です。厚生労働省は、企業に代わって候補者を選別したり、特定の候補者を優先して面接調整したりするAIサービスは職業紹介に該当し許可が必要になり得るとの見解を示しています(内閣府 規制改革WG)。経団連の2026年4月の報告書(AIの結果のみで不利益な判断をしない、性別・年齢を入力しない、AI利用を候補者に開示する)が事実上の標準になりつつあります(経団連)。

政策と世論:AI推進型、労働側の施策は薄い

AI推進法は2025年9月に全面施行され、罰則はありません(White & Case)。2026年7月の人工知能基本計画改定では、2040年度までに垂直型AIへ約23.1兆円、フィジカルAIへ約10.5兆円の官民投資を目標としています(共同通信)。2026年度のAI関連予算5,027億円のうち、「AIと協働する」労働者支援は19億円(0.4%)にとどまります(内閣府)。政府はAIを雇用への脅威ではなく、人手不足の解決策と位置づけています。

世論は比較的冷静で、AI製品に不安を感じる日本人は29%と、米国の64%を大きく下回ります(Ipsos AI Monitor 2025)。AIを前提とした働き方改革は2027年春闘の論点となる見通しで、使用者側が推進し、連合は労働移動は本人の意思を尊重すべきだと主張しています(共同通信)。

人材業界の機会とリスク

機会:成長・分散・二極化する市場

人材紹介の手数料収入は10年間で年率約11%成長し、上位5–6社のシェアは20–30%にとどまり、許可取得のハードルも低い市場です。市場はハイクラス特化型とプラットフォーム型の両極に分かれ、中間の総合型は圧迫されています。セグメント別の評価:

セグメント需要のシグナル手数料と規制AIとの親和性評価
ハイクラス・エグゼクティブ(年収800万円超)JACエグゼクティブ+31%、1件あたり手数料103万円(+10.9%)、年収1,000万円超の7割が転職で到達成功報酬30–35%を維持、着手金も可、規制圧力は最小AIはソーシングとロングリスト作成を支援、判断は人最も有望
IT・デジタル・AI人材JACデジタル+45%、情報通信の賃上げ率8.28%、年収1,000万円超のAI求人は3年で3.5倍標準的な成功報酬、特別な規制なしスキルが明確でAIマッチングが最も有効最も有望
外国人ホワイトカラー技人国46.8万人(+13.8%)、留学生40.8万人のうち国内就職は38%ホワイトカラーは標準的な成功報酬、育成就労の転籍は民間紹介不可多言語スクリーニングと越境ソーシングはAI向き有望(ホワイトカラーに限る)
医療・介護介護の成約+25–29%、医師−18%、看護師−10%手数料率20–25%、上限導入の可能性、顧客満足度が低いマッチングは定型的だが政治リスクが高い医師・看護師の成功報酬型は回避
事業承継・PE投資先の経営人材ブラックストーン・ベインによる派遣大手の非上場化、後継者難倒産の高止まり、PEの採用拡大リテイナー型サーチ、特別な規制なし人脈主導、AIはマッピングを補助選択的、中長期

出典:JAC;国税庁;JILPT;厚生労働省;日本医師会;ロバート・ウォルターズ。

副業・フリーランスの紹介も成長分野です。パーソルの同事業は29%成長し、副業を認める企業は72.5%です(マイナビ)。ただし職業紹介とは法的な扱いが異なるため、別途検討が必要です。

リスク

  • 成功報酬モデルへの圧力。 ダイレクトリクルーティングは年19–23%成長。2025年4月からの手数料率公開義務で情報の非対称性が縮小。AIツールでソーシングコストはゼロに近づき、月額制モデルが30–35%の成功報酬と直接競合。
  • 需要の鈍化。 有効求人倍率は1.31倍から1.18倍に低下。企業は厳選採用を続け、パーソルの人材紹介収益は5%減、業況DIは9.0に低下(JESRA)。
  • AIをめぐる規制の不確実性。 候補者を選別・優先するAIサービスには許可が必要になり得、線引きは検討中(内閣府 規制改革WG)。
  • 外国人材をめぐる政治リスク。 受入れ拡大への賛成は2年で71.8%から58.2%に低下。政策の重点は人手不足対策から秩序維持へ移行。
  • 医療分野の手数料上限。 医療・介護の紹介手数料に法的上限が設けられる可能性が高まっています。

市場参加者への示唆

  1. 専門特化。 成長と価格決定力はハイクラス、IT・デジタル、外国人ホワイトカラーにあります。東京圏は紹介事業所の3分の1、外国人労働者の4分の1が集中し、最も需給が逼迫した市場です。
  2. 料金体系の多様化。 上級職・難易度の高い案件は成功報酬を維持し、大量採用や中小企業には月額制やハイブリッド型を加える。収益源が分散したプラットフォームは景気後退への感応度が低いことが示されています(ビジョナル)。
  3. AIとコンサルタントの分業。 ソーシングと一次スクリーニングはAIに任せ、コンサルタントは企業への助言とクロージングに集中。生産性の目安はJACのコンサルタント1人あたり年間約2,400万円。コンサルタントの定着がボトルネックです(JACの離職率は11.6%に上昇)。
  4. コンプライアンスを初めから組み込む。 有料職業紹介許可を取得し、最終判断は企業側に残し、AI利用を候補者に開示し、AIに年齢・性別を入力しない。
  5. スケジュールを注視。 2025年度の公式データは2027年3月、育成就労と新しい永住ルールは2027年4月に開始、医療手数料上限は2027年までに判断が示される可能性。先行指標としては、有効求人倍率、業況DI、doda転職求人倍率(2026年6月2.55倍)、事務職の求人数が有用です。

出典とデータ上の注意

主な出典

データ上の注意

  • 時点: 人材紹介・派遣の2025年度公式データは2027年3月公表予定で、最新は2024年度です。
  • 定義の違い: 矢野経済研究所と厚生労働省では市場規模の定義が異なります(ホワイトカラー紹介4,490億円と紹介全体9,835億円、派遣9.32兆円と9.90兆円)。派遣労働者数も厚生労働省(220万人)と労働力調査(158万人)で異なります。人手不足倒産の定義は帝国データバンクと東京商工リサーチで異なります。
  • 二次資料: 社人研の年別推計値、一部の厚生労働省データ、複数のAI導入率は信頼できる二次資料によるものです。外部公開前には原資料との照合を推奨します。
  • 業界慣行: 成功報酬30–35%は市場慣行であり公式統計ではありません。リテイナー型サーチの料率や2026–2030年の市場予測に関する公開データはありません。
  • 通貨: 金額はすべて円建てです。

日本市場での立ち上げについて、三言語で書いています。

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