M字は消え、L字が残った

日本の女性の就業率は、かつてアルファベットのMの形をしていた。20代で働き、結婚や出産で離れ、子どもが大きくなると戻る。そのため真ん中がへこむ。2025年のデータでは、このへこみはかなり浅くなった。25〜29歳の就業率は87.4%で、最も低い35〜39歳でも80.6%ある。
ところが別の線を引くと、形はまるで違う。年齢別に「人口に占める正規雇用者の割合」を見ると、女性は25〜29歳の62.8%を頂点に下がり続け、40代前半には4割ほどになる。内閣府の男女共同参画白書は、これをL字カーブと呼んでいる。
二本の線のあいだにいる人
図1女性の就業率(黒)はほぼ平らになったが、女性の正規雇用比率(青)は25〜29歳から下がり続ける。黄色の部分が、働いているが正社員ではない人だ。点線は男性の正規雇用比率。
35〜39歳では、女性の就業率80.6%に対して正規雇用比率は43.6%で、差は37ポイント。40〜44歳では82.7%と39.5%で、43ポイントの差がある。同じ年代の男性の正規雇用比率は74〜76%ほどだ。
Mのへこみが浅くなったのは、女性が元の正社員のポストに残ったからというより、いったん離れたあと派遣や契約、パートとして戻ってきたから、と読むほうが数字には合う。人は労働市場にいる。多くの企業の採用の視野に入っていないだけだ。
なぜ非正規なのか
2025年の女性の非正規雇用者は1,450万人。いまの雇用形態を選んだ主な理由で最も多いのは「自分の都合のよい時間に働きたいから」で529万人、「正規の職員・従業員の仕事がないから」は88万人だった。
この内訳は大事だ。多くの人は正社員の仕事が見つからないのではなく、正社員の働き方が自分の時間と合わない。「正社員への転換」だけを用意しても、この母集団は開かない。変えるべきは働き方の形のほうだ。
人材マップに落とす
人材マップに、この層はたいてい出てこない。「現職正社員」「職歴が途切れていない」で絞れば、最初の段階で外れてしまう。だがその中には、20代で正社員として働き、専門の経験をきちんと積んだ人が少なくない。
この母集団を開くなら、手をつけるところは三つあると思う。
- 雇用形態:「正社員」と「フルタイム・毎日出社」を切り離す。短時間正社員や、職務で定義した契約ポジションも採用の選択肢として書ける。
- 時間の設計:コアタイム、リモートの割合、残業の見込みを求人票に明記する。この層にとっては、給与より先に応募を決める項目になりやすい。
- 復帰の入口:正社員を一度離れた人が戻れる道をつくる。復帰プログラムや、入社直後は業務量を段階的に増やす設計などだ。評価では直近の肩書だけでなく、過去の専門経験を見る。
すべてのポジションが短時間やリモートに向くわけではない。成果で仕事を切り分けられるポジションから試すのが現実的だろう。日本全体の労働需給は日本の労働市場レポート 2026で確認できる。
一つ目。白書の正規雇用比率は人口が分母で、就業者が分母ではない。「就業者のうち正社員の割合」で見れば数字は高くなり、形も少し変わる。
二つ目。これは同じ年の年齢別の断面で、同じ人たちが年をとった変化ではない。いまの40代と20代では就職したときの環境が違うので、若い世代の線が将来同じように下がるとは限らない。
三つ目。雇用形態の理由は本人の回答だ。「都合のよい時間」の背景には育児や介護もあれば、それ以外の事情もあり、このデータでは分けられていない。
手元の求人のうち、本当はフルタイム・毎日出社でなくてもよいものはないだろうか。
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