後継者難倒産、上半期だけで264件

2026年1〜6月に、後継者がいないことが一因となって倒産した会社は264件だった。東京商工リサーチ(TSR)が2026年7月9日に公表した集計で、上半期としては2013年以降で最も多い。そのうち96.2%が破産で、85.6%は代表者の死亡か体調不良が絡んでいた。
以前、社長の平均年齢が60歳を超えたという帝国データバンクの数字を取り上げた。今回はその続きにあたる。年齢の数字が「いずれ来る話」だとすれば、倒産件数はすでに起きた結果のほうだ。
後継者不在は、原因の一つでも「後継者難」に入る
TSRの「後継者難」倒産は、負債1,000万円以上の倒産のうち、後継者の不在が要因の一つと判断されたものを数えている。TSRはこれを「人手不足」関連倒産の一分類として扱っており、ほかに求人難、従業員退職、人件費高騰がある。後継者不在が唯一の原因という意味ではない。売上の落ち込みや借入があったところに、社長が倒れて会社を続ける人がいなかった、というケースも含まれる。
年間で見ると、2013年は234件、2022年は422件で初めて400件を超え、2023年430件、2024年462件と増えた。2025年は454件で6年ぶりに前年を下回ったが、それでも過去2番目の水準だ。なお帝国データバンクも後継者難倒産を数えているが、法的整理だけを対象にした別の基準で、2025年は503件だった。本稿の件数はすべてTSRのもので、二社の数字を混ぜて比べることはしない。2026年上半期の264件は、それまで上半期の最多だった2024年の256件を上回った。
全体の中での重さも見ておきたい。TSRによると、2026年上半期の全国企業倒産(負債1,000万円以上)は5,346件だった。後継者難はその4.9%にあたる(割合は私の計算)。TSRが倒産全体の背景として挙げているのは物価高や人手不足で、後継者難は割合としては小さい。それでも、景気よりも社長の年齢と健康に左右されやすいという点で、ほかの倒産とは性質が違うと私は見ている。
Fig.1後継者難倒産(負債1,000万円以上)は2022年から年400件台が続き、2026年上半期は264件で上半期の最多を更新した。出典:東京商工リサーチ「TSRデータインサイト」2023年1月、2025年1月、2026年1月、2026年7月公表分。
なぜほとんどが破産で終わるのか
264件のうち、代表者の死亡が119件、体調不良が107件で、合わせて226件、85.6%を占める。この比率は2022年(85.5%)からほとんど動いていない。後継者難倒産の大半は、計画が遅れた結果というより、社長が突然いなくなった結果として表に出てくる。
破産が96.2%と高いのも、ここから説明がつく。民事再生のような再建型の手続きには、事業を続ける意思と、それを担う人が要る。社長しか取引先や銀行との関係を持っていなかった会社では、その人が倒れた時点で、続けるという選択肢自体が消えてしまう。資本金1,000万円未満の会社が65.5%というのも、社長と会社がほぼ同じという規模感を示している。
私が気にしているのは、承継計画の書類があるかどうかより、社長が明日入院したら誰が銀行と話し、誰が請求書に判を押すのか、という一点だ。
立派な計画書が金庫に入っていても、その金庫を開けられるのが社長一人、という会社は少なくないと感じている。
後継者不在率は下がっているのに、なぜ倒産は増えるのか
帝国データバンク(TDB)の全国「後継者不在率」動向調査(2025年11月公表)によると、2025年の後継者不在率は50.1%で、7年連続で下がった。分母は同社のデータベースで後継者の有無が分かる約27万社で、「いない」か「未定」の会社の割合だ。
この「半分」は、少し割り引いて読んだほうがいい。社長が30歳未満の会社では不在率が83.2%だが、30歳前の社長に跡継ぎがいないのは、むしろ自然なことだ。80代以上の社長では22.2%まで下がる。問題が集まっているのは、社長が高齢なのに、まだ誰に継ぐか決まっていない層である。
それに、倒産件数は氷山の一角でしかない。TSRによれば、2025年の休廃業・解散は6万7,210件で過去最多、代表者が60代以上の会社が90.6%を占めた。しかも52.8%は直前の決算が黒字だった。同じ2025年の後継者難倒産454件と比べると、件数はおよそ150倍になる(これも私の割り算だ)。負債を抱えて倒れる会社より、黒字のまま静かに畳む会社のほうが圧倒的に多い。
日本に入ってくる会社にとっての意味
後継者のいない黒字企業が毎年数万社単位で市場から消えている、というのは、外から入る会社にとっては買収の機会でもある。TDBの同じ調査では、2025年に社長が交代した会社のうち「M&Aほか」による就任が20.6%で、内部昇格(36.1%)や同族承継(32.3%)に次ぐ規模になっている。顧客、許認可、現場の人をまとめて引き継げるのは、ゼロから営業網を作るより速い場合がある。老舗企業が多い日本では、取引先が「誰が継いだか」をよく見ているので、なおさらだ。
ただし、後継者難倒産の85.6%が示しているのは、こうした会社では社長個人が会社の中核だということだ。買った後に前の社長が抜ければ、その穴を誰が埋めるのかという問題がすぐに来る。日本で経営層を外から採るには時間がかかり、社長の代わりが数か月で見つかることはまれだ。買収価格と並べて、社長の引き継ぎ期間と、二番手が誰なのかを最初に確かめておきたい。
中小企業で働く人にとっての意味
働く側から見ると、この数字はリスクの形を教えてくれる。会社の寿命を決めるのは、業績より先に社長の健康だった、ということが起きる。転職先や今の勤め先を見るときに、社長の年齢と後継者が決まっているかどうか、社長以外に銀行や大口顧客と話せる人がいるかどうかは、確かめておいて損はない。市場の地図で次の会社を選ぶときの項目に、一つ足しておくとよいと思う。
とはいえ、後継者が決まっていない会社にいることが、そのまま悪い話とも限らない。オーナーが外部への譲渡を考え始めれば、社内の人間が引き継ぎの要になる。買い手から見ても、社長以外で現場と顧客を分かっている人は、いちばんほしい人材だ。
なお、どの倒産を「後継者難」とするかはTSRの調査上の判断で、原因が一つに決まるものでもない。2026年4〜9月で見ても263件(前年同期比23.4%増)と増勢は続いているが、年間で前年を超えるかは、2026年10月時点ではまだ分からない。今の数字から言えるのは、承継の問題が「準備の遅れ」より「ある日突然」の形で表に出てくる、ということくらいだ。それだけでも、備え方はかなり変わると思う。
データ出典 | Sources | 数据来源
- 東京商工リサーチ「2026年上半期『後継者難』倒産 過去最多の264件」(2026年7月)264件、破産96.2%、死亡・体調不良85.6%
- 東京商工リサーチ「年度上半期の『後継者難』倒産 過去最多の263件」(2026年10月)2026年4〜9月
- 東京商工リサーチ「2025年『後継者難』倒産 過去2番目の454件」(2026年1月)
- 東京商工リサーチ「2024年の『後継者難』倒産 過去最多の462件」(2025年1月)
- 東京商工リサーチ「2022年は過去最多の422件」(2023年1月)2013年234件、死亡・体調不良85.5%
- 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」不在率50.1%、約27万社
- 東京商工リサーチ「2025年 休廃業・解散」6万7,210件、黒字率52.8%
- 帝国データバンク「倒産集計 2025年報」後継者難倒産503件(法的整理のみ、TSRとは別基準)
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