100歳以上が10万人超:70代で働くのは普通になるか

100歳以上の高齢者が初めて10万人を超えた。厚生労働省が2026年9月15日に公表した数字は、同年9月1日時点で10万7,677人、前年の9万9,763人から7,914人増えている。ここから「70代まで働くのが当たり前になる」と言いたくなるが、長寿の数字と働ける年数の数字は、別々に確かめないと話がずれる。
65歳以降の処遇は、70歳までの就業確保が努力義務になった2021年以降、多くの会社にとって先送りしにくい論点になっている。百歳の数字を入口に、70代で働くことが会社と個人にとってどんな形になりそうかを、手元にある公的統計で整理してみたい。
10万人超えは、どこまでの話か
数えているのは住民基本台帳に載っている100歳以上の人で、そのうち女性が9万4,298人と87.6%を占める(厚生労働省、2026年)。人口全体から見れば0.1%に満たない。長寿の「尻尾」が太くなったことを示す数字で、70代の人がどれだけ元気に働けるかについては、この数字からは何もわからない。
ただ、入口としては悪くない。100歳まで生きる人が10万人いるなら、70歳から先の時間をどう使うかは、もう一部の人だけの問題ではないからだ。
70代前半の3人に1人は、すでに働いている
総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(2026年9月20日公表)によると、2025年の就業率は65〜69歳が54.5%、70〜74歳が36.2%、75歳以上が12.6%で、いずれも比較できる年以降で最も高い。65歳以上の就業者は943万人で、就業者全体の13.8%、ほぼ7人に1人にあたる。
「70代で働くのは普通になるか」という問いには、70代前半についてはすでに3人に1人がそうだ、と答えることになる。
ただし中身を見ると印象が変わる。65歳以上で雇われて働く人のうち、非正規の職員・従業員は76.1%で、パート・アルバイトだけで52.7%だ(同、役員を除く)。業種別では卸売・小売業、医療・福祉が多く、農業・林業では就業者の50.6%が65歳以上である。ここでいう就業率は、自営業や家族従業者も含めた「働いている人」の割合で、会社員として正社員のまま働き続ける人の割合とはまったく違う。
Fig.12025年の就業率は65〜69歳54.5%、70〜74歳36.2%、75歳以上12.6%(総務省統計局)。同じ年齢軸に、2022年の健康寿命(男性72.57歳、女性75.45歳)と平均寿命(男性81.05歳、女性87.09歳、厚生労働省)を60歳以降だけ並べた。男性は70代前半で、平均的には健康寿命の線を越える。
健康寿命の72.57歳をどう読めばよいのか
健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されない期間」で、2022年の値は男性72.57歳、女性75.45歳だ(内閣府「令和8年版高齢社会白書」、厚生労働省の算定)。同じ年の平均寿命との差は、男性で約8.5年、女性で約11.6年になる。最新の令和7年簡易生命表(2026年7月公表)では、平均寿命は男性81.35歳、女性87.33歳までのびた。
この数字には読み方の注意が二つある。まず、どちらも0歳時点からの平均で、すでに70歳まで健康に来た人の残り時間を表してはいない。65歳の男性の平均余命は2025年で19.68年あり、平均すると84歳台まで生きる計算だ。次に、健康寿命は国民生活基礎調査で本人が「日常生活に影響がある」と答えたかどうかから計算している。自己申告で、仕事ができるかどうかを直接測ったものとは違う。
それでも図にすると見えてくることがある。男性の場合、平均的な健康寿命の線は70歳の努力義務ラインのすぐ先にある。70代前半は、元気に働ける人と、通院や家族の介護で働き方を変えざるを得ない人が、同じ年齢の中で大きく分かれる時期だと読むのが自然だと思う。
会社の側はどこまで準備できているのか
高年齢者雇用安定法は65歳までの雇用確保を義務とし、70歳までの就業確保は2021年4月から努力義務になった。厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」(2025年6月1日時点、従業員21人以上の23万7,739社)では、70歳までの措置を実施済みの企業は34.8%だった。内訳は継続雇用制度が28.3%、定年制の廃止が3.9%、定年の引上げが2.5%で、業務委託や社会貢献事業という雇用以外の選択肢は0.1%にとどまる。定年を60歳に置く企業は62.2%と、いまも多数派だ。
34.8%の多くは、65歳までの再雇用の仕組みを70歳まで延ばした形だと読める。60歳から65歳の再雇用で起きている給与と役割のずれは定年後再雇用の5年間で詳しく書いたが、70歳まで延ばすと、その上に健康のばらつきが加わる。
私の考えでは、65歳以降の契約は「同じ仕事を少し短く」という延長ではうまくいかない。週の日数と時間を本人の状態に合わせて選べること。1年ごとの更新のたびに、担う責任を言葉で確かめ直すこと。後任への引き継ぎを、期限と成果物のある正式な仕事として持ってもらうこと。体調が変わったときに、誰も気まずくならずに役割を軽くできる設計にしておけば、本人も現場も長く続けやすい。
個人は50代のうちに何を確かめておくか
70歳で働いている自分を想像するとき、肩書きはたぶん役に立たない。残るのは、特定の顧客との関係、ほかの人に教えられる技術、現場の判断を任せられる経験のような、社外でも値段がつく部分だ。日本では同じ会社に長く勤める人がまだ多く(日本の勤続年数の数字)、社内でしか通じない強みを自分の価値と取り違えやすい。
50代のうちに、自分の仕事を責任の単位に分けて、どれが70歳まで持てそうか、どれは体力や立場が前提なのかを一度書き出しておくと、会社から条件を示されたときに落ち着いて話ができる。
正直に言うと、70〜74歳の就業率36.2%が「働きたい人が増えた」結果なのか、「年金だけでは足りない人が増えた」結果なのかは、この統計からはわからない。労働力調査は働いているかどうかを聞いており、理由までは聞いていないからだ。私は両方が混ざっていると見ているが、その割合によって、会社が用意すべき仕事の形はかなり変わる。そこは次に確かめたい数字である。
データ出典
- 厚生労働省「令和8年度百歳の高齢者へのお祝い状及び記念品の贈呈について」(2026年9月15日)100歳以上10万7,677人、女性9万4,298人(9月1日時点)
- 厚生労働省「令和7年度百歳の高齢者へのお祝い状及び記念品の贈呈について」(2025年9月12日)100歳以上9万9,763人(9月1日時点)
- 総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」統計トピックスNo.149(2026年9月20日)就業率65〜69歳54.5%、70〜74歳36.2%、75歳以上12.6%(2025年)
- 厚生労働省 令和7年「高年齢者雇用状況等報告」集計結果 70歳までの就業確保措置 実施済み34.8%
- 厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」平均寿命 男性81.35歳、女性87.33歳
- 内閣府「令和8年版高齢社会白書」第1章第2節 健康寿命 男性72.57歳、女性75.45歳(2022年)
- 厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」平均寿命 男性81.05歳、女性87.09歳
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