佐藤伸明 Nobu Sato

CHAGEEはまだ日本にない。大阪にはよく似た店がもうある

CHAGEEはまだ日本にない大阪には似た店がある

2026年4月1日、大阪の中崎町にCharmingという名のティースタンドが開いた。写真が中国のSNSに流れ、多くの人が一目で気づいた。ロゴの配置、配色、構図が、中国の茶飲ブランドCHAGEE(覇王茶姫)とほぼ同じで、中央の京劇の女性が着物の女性に置き換わっている。カップ、紙袋、メニューの組み方も似ている。

CHAGEEのカスタマーサービスは4月3日、記録して注視している、会社は日本に店舗を持っていない、と答えた。店を運営するのは2022年設立の日本の会社で、ブランドのページには上海の茶文化に着想を得たとある。この記事を書いている時点で、CHAGEEは正式な声明を出しておらず、訴訟もない。この店が模倣かどうか、私は判断しない。判断できることではないし、この記事の主題でもない。

主題は、法的に打てる手がほとんどないこと

仮にCHAGEEが日本でこの件に対処したいとして、手元に何があるだろうか。

日本の商標は先願主義で、特許庁が審査する。権利が与えられるのは先に出願した者で、先に使っていた側がどれだけ有名でも、この順番は変わらない。CHAGEEが日本で商標を登録していなければ、日本ではこの名前とロゴについて商標権を何も持っていない。これが一枚目の壁だ。

二枚目は不正競争防止法だ。未登録の表示も保護されるが、条件はその表示が日本で「周知」であること、つまり日本の需要者に広く認識されていることだ。日本に店舗がゼロのブランドが、日本での周知性を示すのは難しい。マレーシア、シンガポール、韓国で有名でも、日本の裁判官にとってはそれは数に入らない。

三枚目は、商標法の悪意の出願に関する規定だ。外国で周知の商標を不正の目的で日本に出願したものは、拒絶や無効の対象になる。有用な条文だが、これが解くのは「他人が自分の商標を先取りした」場合で、「他人が自分によく似た店を開いた」場合ではない。しかも外国での周知性と不正の目的を立証し、異議や無効の手続きを進めることになり、一年は見ておく必要がある。

1先に調べるJ-PlatPatで検索名前が登録済みでないか2早く出願開店の12–18か月前審査は半年から一年3分けて出願中国語・英語・カタカナ・ロゴ第30/43/35類4監視年一回、類似出願を確認異議期間は二か月

Fig.1日本の商標は先願主義。登記簿に書いていないものは、日本ではあなたのものではない。

教訓は、お茶とは関係がない

日本に入ろうとする中国のブランドのどれに置き換えても、事情は同じだ。中国に千店あっても日本はゼロ。ロゴは小紅書で誰もが知っていても、特許庁のデータベースには存在しない(特許庁の審査官は、たぶん小紅書を見ていない)。日本に入る前にいちばん安く、いちばん忘れられやすいのが商標だ。

私の経験では、順序はこうなる。12か月から18か月前に日本で出願する。審査には通常半年から一年かかり、進出を決めてから一号店を開くまでも、だいたいそのくらいだからだ。出願するのは中国語の名前だけではない。ロゴの図形、英語名、カタカナ表記を分けて出す。日本の消費者はカタカナで呼ぶから、その表記を登録しなければ、他人が登録できる。区分も分ける。茶飲料そのもの(第30類)、飲食物の提供(第43類)、小売(第35類)。一つしか登録しなければ、残りの二つは空いている。

出願の前に調べる。特許庁のJ-PlatPatで、自分の名前がすでに誰かに登録されていないかを検索する。日本では珍しいことではない。中国ですでに知られた名前が、日本では無関係の会社に先に登録されていて、入ってきてから自分の名前が使えないと知る。問題が見つかれば、交渉するか名前を変えるかだが、どちらも開店の前にやる。

登録のあとは、監視する。年に一度、類似の出願がないかを確認し、あれば異議を申し立てる。異議申立ての期間は二か月しかない。この仕事は日本の弁理士に頼めばよく、費用もそれほど高くない。

耳の痛い一言

大阪のあの店は、CHAGEEを日本で待っている人がいることの証拠で、良い知らせだ、という見方がある。半分は同意する。待っている人がいることは確かだが、待っている人の中には商売をする人もいる。日本では、「みんなそれがあなたのものだと知っている」だけでは権利は守れない。守ってくれるのは登記簿だ。登記簿に書いていないものは、ここではあなたのものではない。

日本に入る会社はしばしば、予算を立地と内装に使い、数十万円の商標を最後に回す。私は、この順序を逆にしたほうがいいと思っている。店は三か月遅れてもよい。名前は三か月遅れてはいけない。


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