佐藤伸明 Nobu Sato

東京と地方、求人倍率の差

東京の有効求人倍率:受理地別1.70倍、就業地別1.07倍、全国1.18倍

東京の有効求人倍率は1.70倍で全国一だ。2026年8月の数字である。ところが同じ月の同じ資料に、東京のもう一つの数字がある。1.07倍で、全国の1.18倍より低い。

違いは数え方にある。前者は「どこで求人を受け付けたか」、後者は「どこで働くか」で数えている。

受理地別と就業地別

厚生労働省の有効求人倍率は、ハローワークの有効求人数を有効求職者数で割ったものだ。都道府県別には二通りの数え方がある。求人を受け付けたハローワークの所在地で数える受理地別と、実際に働く場所で数える就業地別だ。

東京に本社がある企業は、各地の拠点の求人をまとめて東京のハローワークに出すことが多い。受理地別ではそれがすべて東京に計上され、就業地別では埼玉、千葉、神奈川や、さらに遠くの県に戻っていく。2025年平均で、東京の二つの数え方の差は0.63ポイントと全国で最も大きかった。

0.81.01.21.41.61.8全国 1.18受理地別就業地別東京1.70 → 1.07大阪1.11 → 0.95福岡1.06 → 0.97愛知1.20 → 1.18神奈川0.83 → 1.02埼玉0.99 → 1.13千葉0.99 → 1.27滋賀1.04 → 1.34富山1.48 → 1.68福井1.57 → 1.722026年8月、季節調整値。出所:厚生労働省「一般職業紹介状況」第6表

図1同じ月、二つの数え方。東京は1.70から1.07に下がり、千葉、滋賀、埼玉など東京周辺や工場の多い県は逆に上がる。

拠点を選ぶときに見るべきは就業地別だ。この基準で2026年8月に高いのは福井1.72、山梨1.71、富山1.68、低いのは大阪0.95、福岡0.97、北海道0.98。東京は1.07で、全国では低い側に入る。

地方の現場は採りやすいか:どの地方かによる

「地方なら現場の人は採りやすい」という言い方は、就業地別の数字を見る限り一概には言えない。大阪、福岡、北海道は1を下回り、求職者のほうが多い。一方で北陸や山梨は1.6を超え、現場の採用競争は東京よりはるかに激しい。

この数字はハローワーク経由で、現場職や中小企業の求人に偏っている。職種による差は職種別の有効求人倍率の記事で書いたとおりで、同じ地域でも職種によって十数倍の開きがある。

管理職の地域差は、公的統計では見えない

「地方の管理職はどれだけ足りないか」を示す数字を探したが、公的統計からは出てこない。2026年8月、全国のハローワークで管理的職業の有効求人は4,955件、有効求職者は6,101人で、倍率は0.81倍だった。管理職の採用はハローワークをほとんど通らず、人材紹介やリファラル、社内異動で動く。この0.81は、管理職が採りやすいという意味ではない。

この部分は経験で判断するしかない。私が地方に拠点を立ち上げたときは、まず現場のチームを採用し、チームがある程度の規模になってから地元の責任者を探した。現場は地域の求人倍率を見て計画を立てられるが、責任者は地元の市場ですぐに見つかるとは限らない。先にチームがあれば、そのポジションが何を任され、なぜ来る価値があるのかも具体的に語れる、というのが私の理解だ。

外資の拠点選びにとっての意味

  • 受理地別ではなく就業地別を見る。東京の1.70は、本社が求人をまとめて出していることによるところが大きい。
  • 現場:就業地別の倍率で採用期間と予算を組む。1.5を超える県では、現場も採りにくい前提で準備する。
  • 責任者:地元で見つかると決めてかからない。東京からの派遣や社内異動、あるいは上のようにチームを先、責任者を後にする方法もある。

拠点の最初の一人を誰にするかは、日本法人の最初の一人の記事で書いた。

確信が持てない点

一つ目。これはハローワーク経由の数字だけで、民間の求人サイトや人材紹介の求人は含まれない。ホワイトカラー職の実際の競争は、この数字と違う可能性がある。

二つ目。使ったのは単月の季節調整値で、月ごとの振れがある。ただ2025年平均でも向きは同じで、受理地別は東京が最高の1.73、就業地別は福井が最高の1.84だった。

三つ目。管理職の地域差について信頼できる公的データは見つけられず、上の判断は経験に基づいている。

検討したことのある地方拠点では、どちらの求人倍率を見ていただろうか。


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