佐藤伸明 Nobu Sato

内定辞退率をどう読むか

2026年卒の内定辞退率65.1%、分母は内定を得た学生

新卒の内定辞退率は65.1%だ。2026年3月卒の大学生の2025年12月1日時点の数字で、インディードリクルートパートナーズ リサーチセンター(旧・就職みらい研究所)の「就職プロセス調査」による。この数字を見て、出した内定の3分の2が断られる、と受け取る人は多い。

そういう意味ではない。

分母は人で、内定の数ではない

就職内定率94.8%分母:就職志望の学生 分子:内定を一つ以上得た学生内定辞退率65.1%分母:内定を得た学生 分子:内定を一つ以上辞退した学生2026年3月卒の大学生、2025年12月1日時点。出所:インディードリクルートパートナーズ「就職プロセス調査」

図1二つの率はどちらも学生が分母で、企業が出した内定の数ではない。94.8%が内定を持ち、そのうち65.1%が一つ以上辞退している。

65.1%の定義は、内定を得た学生のうち、それまでに内定を一つでも辞退した人の割合だ。分母も分子も人である。内定を三つ得て一社に決めた学生は「辞退あり」に数えられる。

つまりこの数字が言っているのは「学生のおよそ3分の2が複数の内定を持っていた」ということで、「企業が出した内定の65%が断られた」ではない。一社にとって自社の内定がどれだけ断られたかは、別の分母で見る必要がある。辞退された内定の数を出した内定の数で割る。この数字は各社が自分で計算するもので、公的な統計はない。

この率は安定している。2018年3月卒の同じ時点では65.7%、2025年卒と2026年卒はいずれも65.1%だった。同じ調査で2026年卒の就職内定率は94.8%。ほぼ全員が内定を持ち、多くは複数持っている。これが新卒市場の平常の姿で、大卒就職率98%の分母の記事で見た仕組みでもある。

中途には統一された数字がない

中途採用の内定辞退率について、新卒と並べて比べられる統一された公的統計は見つからなかった。人材サービス会社や各種調査の数字は分母がまちまちだ。候補者単位のものもあれば内定単位のものもある。内定から回答までの辞退だけを数えるものもあれば、承諾後から入社前までの辞退を含むものもある。

「中途の内定辞退率」を見かけたら、まず三つを確かめたい。分母は人か内定か。どの時点からどの時点までか。どんな企業や職種のサンプルか。答えがわからなければ、自社の数字と比べる材料にはならない。

人を見極めたあとに、closeがある

人とポジションのマッチングが答えるのは「この人で合っているか」だ。その人が来るかどうかは別の問題になる。日本の中途採用では、内定承諾から入社までに1〜3か月空くことが多い。退職の申し出、有給の消化、現職からの引き留めがあるからだ。この期間はいちばん問題が起きやすく、いちばん見落とされやすい。

closeは独立した工程として設計したほうがよいと思う。

  • オファーの構成:年収、等級、担う範囲、評価の方法、次の昇格の条件を明記し、手元のほかの内定と並べて比べられるようにする。候補者側の比べ方は手元の内定に五段階判定をかけるが参考になる。
  • 提示から回答まで:無理のない回答期限を設け、その間に配属先の責任者がもう一度話す。家族、通勤、試用期間など、候補者がまだ口にしていない不安を先に出してもらう。
  • 承諾から入社まで:連絡を切らさず、入社の資料を早めに渡し、チームと会う機会をつくる。現職から引き留められたときにどう考えるかは、承諾の時点で一度話しておく。

面接の段階で何を見るかは書類選考のあと、面接で私が探しているものに書いた。この記事はその後の話だ。

確信が持てない点

一つ目。65.1%は調査モニターの回答で、大学生の有効回答は774人。卒業生全体の構成とは完全には一致しない。

二つ目。これは12月1日時点の数字で、卒業までにさらに辞退が出るため、最終的な率はもっと高い可能性がある。

三つ目。中途については数字を示していない。安心して引用できる統一された定義が見つからなかったからだ。

自社が出した内定のうち、最終的に入社に至らなかったものがどれだけあるか、数えたことはあるだろうか。


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