佐藤伸明 Nobu Sato

生産年齢人口、30年で1,350万人減。就業者はなぜ増えたのか

それでも就業者は増えている

目次3
  1. 1,353万人は、何を数えた数字か
  2. 分母が減ったのに、なぜ働く人は増えたのか
  3. 採用する側にとって、これは何を意味するか

採用がうまくいかない理由は、会社ごとに違う顔をしている。紹介会社の手数料が上がった、候補者が選ぶ側になった、内定を辞退された。どれも本当だが、どの話にも同じ分母がある。総務省の人口推計で、日本の15〜64歳人口は1995年の8,726万人を頂点に減り続け、2024年10月には7,373万人になった。29年で1,353万人、率にして15.5%の減少である。それでも働いている人の数は増えている。この二つをつなげて読むと、次の十年に何が起きるかが見えてくる。

1,353万人は、何を数えた数字か

15〜64歳の人口を、統計では生産年齢人口と呼ぶ。年齢で切っただけの区分で、働いているかどうかは問わない。高校生も大学生も、専業主婦も、早期退職した人も入る。逆に、65歳を過ぎて働いている人は入らない。測っているのは「理屈のうえで働きうる人の数」であって、働いている人の数ではない。

出典は総務省統計局の「人口推計」で、各年10月1日現在、日本に住む外国人を含む。1995年の8,726万人が最も多く、このとき総人口に占める割合は69.5%だった。2024年10月1日は7,372万8千人で59.6%。月次の確定値はさらに進んで、2026年5月1日で7,332万2千人、この一年でも20万人減っている。

総人口はそこまで減っていない。1995年の1億2,557万人から2024年の1億2,380万人へ、177万人の減少にとどまる。減ったのは真ん中の層で、両端が入れ替わった。65歳以上は1,828万人から3,624万人へ増え、15歳未満は減り続けている。日本の人口問題は、総数より先に構造の問題として現れている。

先の見通しは、国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計(出生中位・死亡中位)で、15〜64歳人口は2040年に6,213万人、2050年に5,540万人、2070年に4,535万人。2024年から2040年までにさらに1,160万人減る計算で、過去三十年とほぼ同じ速さが続く。この推計は、外国人の入国超過を年間16.4万人と仮定している。

分母は30年で1,353万人減った。それでも就業者は増えた。埋めたのは女性と高齢者と外国人である

15〜64歳人口:総務省「人口推計」各年10月1日現在(1995年を目盛りの上限とする)、2040年以降は国立社会保障・人口問題研究所の2023年中位推計。就業者:総務省「労働力調査」年平均。外国人労働者:厚生労働省「外国人雇用状況」届出、10月末時点

推計値実績

15〜64歳人口 万人
  • 1995年ピーク、総人口の69.5%
    8,726
  • 2015年60.8%
    7,728
  • 2024年59.6%
    7,373
  • 2040年推計、55.1%
    6,213
  • 2050年推計、52.9%
    5,540
同じ時期に働いていた人 万人、2015年→2025年
  • 就業者 計+426万人
    6,402→6,828
  • うち女性+362万人
    2,764→3,126
  • うち65歳以上+211万人
    732→943
  • 外国人労働者2025年10月末、過去最多
    257

この十年の穴は、女性と65歳以上が埋めた。どちらの就業率も天井に近く、次の十年に同じ余力はない。

図1 日本の15〜64歳人口は1995年の8,726万人から2024年の7,373万人へ減り、社人研の中位推計では2040年に6,213万人、2050年に5,540万人になる。一方で就業者は2015年の6,402万人から2025年の6,828万人へ増え、うち女性が362万人、65歳以上が211万人の増加、外国人労働者は2025年10月末で257万人だった。

分母が減ったのに、なぜ働く人は増えたのか

これまで働いていなかった人が、働くようになったからだ。総務省「労働力調査」で就業者数は2015年の6,402万人から2025年の6,828万人へ、十年で426万人増え、5年連続の増加になった。同じ期間に15〜64歳人口は、2015年から2024年までで355万人減っている。片方が減り、片方が増えた差を埋めているのは、労働参加率の上昇である。

中身を見る。女性の就業者は2,764万人から3,126万人へ362万人増え、15〜64歳女性の就業率は64.6%から75.3%に上がった。65歳以上の就業者は732万人から943万人へ211万人増え、就業率は21.7%から26.0%になった。男性の就業者は十年で63万人しか増えていない。

そこに外国人が加わる。厚生労働省「外国人雇用状況」の届出では、2025年10月末に日本で働く外国人は257万1,037人、一年で26万8,450人、11.7%増えて過去最多を更新した。257万人がどこにどの資格でいるかは別に書いた。

この十年の日本は、家にいた人、退職した人、海外から来た人を労働市場に迎え入れることで分母の減少を吸収してきた。15〜64歳全体の就業率は2015年の73.3%から2025年には80.0%になっている。かなり高いところまで来た数字だと思う。

採用する側にとって、これは何を意味するか

いま感じている「採れない」は、おそらくまだ前半だということだ。

この十年に大きな破綻がなかったのは、女性と高齢者という二つの池にまだ水があったからである。女性の就業率75.3%は、ここからさらに上げる余地が大きいとは言いにくい。65歳以上の26.0%はまだ上がるだろうが、増えるのは70代の就業者で、担える仕事の幅には限りがある。M字は消え、L字が残ったで女性の側に残るものを、定年後再雇用の5年間で高齢者の側の使い方を書いた。二つの池が底に近づくあいだも、分母は毎年20万人ずつ減る。

残る道は、外国人と自動化である。社人研の推計は外国人の入国超過を年16.4万人と置いているが、総務省の数字では2026年5月の外国人人口は397万4千人で、一年で32万5千人増えた。実際の流入は推計の仮定の二倍に近い。日本の分母はいま、想定を上回る外国人の流入に支えられていて、政策の風向きが変われば、この線は揺れる。

外資の日本法人に引き直すと、次のようになる。

人手不足を一時的な相場の変動として予算を組まないこと。これは傾向で、しかも加速する。職種別の有効求人倍率はすでに職種によって一人を何社もで取り合う水準にあり、この先ゆるむ理由がない。採用のリードタイムは三か月より六か月で見ておいたほうが現実に近い。

女性と60歳以上を、正規の供給源として設計に組み込むこと。日本企業はすでにそうしていて、上の数字がその証拠である。職務の切り方、勤務時間、再雇用の条件を「35歳の男性正社員」を前提に書いているなら、いちばん小さい池を、日本中の会社と取り合っていることになる。

外国人社員を、どの会社も求める対象として扱うこと。外国人を雇えるのは特別な会社ではなくなった。日本語と英語、あるいは中国語ができる人材は、外資も日本の大企業も同じ名簿を見ている。「自社なら採りやすい」という感覚は、数年のうちに「いちばん高い人材」に変わる。

理屈では、生産年齢人口が一割減っても一人あたりの産出が一割上がれば帳尻は合う。大企業はその計算をしている。中小企業の多くには、その余力がない。人手不足倒産が過去最多になったのは、その表れだと読んでいる。自動化とAIが分母の減少をどこまで肩代わりするか、私には確信が持てない。賭けるなら、間に合わない前提で、人の供給をこの十年でいちばん高くつく制約として組織を設計しておくほうが、外れたときの傷が浅い。


日本市場での立ち上げについて、三言語で書いています。