佐藤伸明 Nobu Sato

人材マップの、どの円にいるか

人材マップの、どの円にいるか

エージェントがなぜ自分に連絡してくるのか、なぜ来ないのか。多くの人は履歴書の出来だと思っている。そうではない。マップ上のどこにいるか、だ。

エージェントが持っている図

人材マップは名簿ではないに書いたとおり、案件を受けるとまず名簿ではなく図を描く。その職位に必要な能力が、どの会社の、どの職能にあるか。描き終えると、候補者は三つの円に分かれる。

一番内側は同領域。対象の職位と同じ業界、同じ職能の人で、クライアントは履歴書を見てすぐ頷き、エージェントが最初に電話する相手。二つ目は隣接領域。業界が同じで職能が違う、または職能が同じで業界が違う人で、なぜ合うのかをエージェントが説明する必要がある。一番外側は遠い領域。業界も職能も違うが、その職位に欠けている一つか二つの能力をたまたま持っている人で、クライアントは思いつかず、エージェントもほとんど電話しない。

遠い領域隣接領域同領域電話はここまで1. 同領域2. 隣接領域3. 遠い領域

Fig.1マップを描いたあとの三つの円。電話はふつう一番内側までで、二つ目は履歴書の最初の三行で自分を引き込み、一番外側は本当の越境経験で移る。

なぜ連絡が来ないのか

三つの場合がある。

一つ目。一番内側にいるが、いまの会社がクライアントの名簿に入っていない。マップを描くとき、除外する会社がある。クライアントと取引関係がある、引き抜くと問題になる、などだ。そこにいる限り、どれだけ合っていても電話は来ない。

二つ目。二つ目の円にいるが、履歴書の最初の三行に、合う一つか二つの要素が書かれていない。エージェントは一日に何十通も履歴書を見る。二つ目の円の人は、最初の三行で自分を一番内側に引き込む必要がある。

三つ目。一番外側にいる。この場合、連絡が来ないのは普通で、本人の問題ではない。紹介案件の報酬は一番内側を前提に決まっていて、遠くまで探す費用は誰も払っていない。

一つ内側に移るには

三つ目から二つ目へは、資格ではなく、本当の越境経験で移る。いまの会社で職能をまたぐプロジェクトを引き受けるほうが、学位を取りに行くより早い。

二つ目から一番内側へは、知られることで移る。日本の市場は LinkedIn のデータほど透明ではなく、エージェントの多くは人に聞いて候補者を見つけている。自分が行きたい円の中に、自分のやってきたことを知っている人はいるだろうか。

逆向きに使う

この図は逆からも見られる。行きたい職位の一番内側にいるのは誰か。自分がそこにいないなら、あと何歩か。「あの会社に行きたい」よりずっと具体的になる。

まだ確信のないところ

三つの円は私の案件での習慣で、もっと細かく分けるエージェントもいる。また日本では同業他社への転職の遠慮が欧米より強く、一番内側の人がかえって動けないことがある。転職率の記事で書いた中年層が動かない話と同じだ。

行きたい職位から見て、いま自分はどの円にいるだろうか。


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