数字で見る日本
中国企業は日本に何社あるのか:317社と2万4,840人の間
317社、3,146社、24,840人
佐藤伸明約7分
「中国企業は日本に何社あるのか」という問いには、317社とも、3,146社とも、2万4,840人とも答えられる。どれも公的な、あるいは定評のある出典がある数字で、どれも嘘ではない。開きはおよそ百倍。違うのは、誰を数えているかだ。市場地図に「在日中国系企業」という区画を描くとき、まずこの物差しの違いを押さえておかないと、区画の大きさが百倍ずれる。
それぞれの物差しは、誰を数えているのか
日本には「中国企業の社数」という公式統計はない。あるのは、対象の切り方が違う三種類の数字である。
一つ目は経済産業省の「外資系企業動向調査」だ。外資比率が三分の一を超える企業のうち、調査に回答した企業を数える。最後の調査は2020年調査で、集計対象は2019年度。集計企業2,808社のうち、親会社が中国の企業は317社、11.3%だった。ヨーロッパ系が1,197社、アメリカ系が607社である。この調査は2020年調査を最後に中止されたので、官庁の数字は2019年度で止まっている。しかも回答した企業だけの数で、回答しなかった企業は入っていない。実数はこれより多い。
二つ目は東洋経済新報社の『外資系企業総覧』2026年版だ。収録は3,146社で、内訳は主要企業1,100社(資本金5,000万円以上かつ外資比率49%以上が主体)と、その他の有力外資2,046社(外資比率20%以上など)。これは中国に限らず全外資の数で、親会社の国籍別の索引は本の中にある。ウェブ上で引ける中国分の社数はない。一定の規模があり、情報を公開している外資の日本法人は、だいたいこの桁だと考えてよい。
三つ目は出入国在留管理庁の「在留外国人統計」である。在留資格「経営・管理」を持つ人は、2025年12月末で全国に46,781人。そのうち中国籍(香港を含む)が24,840人で、53.1%を占める。二位はネパールの3,158人、三位はパキスタンの3,014人、以下ベトナム、韓国、スリランカと続く。ここで数えているのは人であり、会社の数ではない。店主一人の会社なら一人が一社だが、共同経営なら二人で一社になる。本社から派遣されて社長をしている人は「企業内転勤」や「技術・人文知識・国際業務」で在留していることが多く、この数には入らない。
分母も置いておく。日本の企業数は337.5万者(中小企業庁、2021年6月時点)で、うち大企業は1万364者、0.3%である。中国人の経営者が自分で立ち上げた会社は、人数ベースで二万人余り。日本の全企業の1%に満たないが、日本の大企業の数の二倍以上はある。単位が違うので並べて比べるものではないが、桁の感覚はつかめる。
同じ問いでも、物差しが変わると答えは百倍ちがう
「中国企業は日本に何社あるか」の口径の違い。経済産業省 外資系企業動向調査(2019年度、回答企業)、東洋経済『外資系企業総覧』2026年版(全外資)、出入国在留管理庁 在留外国人統計(2025年12月末、人数)
- 経産省の調査外資比率1/3超、回答した中国系317社
- 東洋経済の総覧全外資、資本金5,000万円以上など3,146社
- 「経営・管理」の在留者中国籍、香港を含む24,840人
- 2015年8,690人
- 2020年14,317人
- 2024年21,740人
- 2025年24,840人
どれも正しい数字で、数えているものが違う。問いを一文で書いてから、物差しを選ぶ。
10年で約3倍、そして2025年に入口が狭まった
中国籍の「経営・管理」在留者は、2015年末8,690人、2020年末14,317人、2024年末21,740人、2025年末24,840人と増えてきた。10年で2.9倍である。全国籍の「経営・管理」は同じ期間に18,109人から46,781人、2.6倍。増えた分のうち中国籍の比率は、むしろ高まっている。
この線が2025年に折れた。出入国在留管理庁は2025年10月に「経営・管理」の要件を厳しくし、共同通信によると、2026年上半期にこの資格で新たに入国した人は635人、前年同期比で80.9%減だった。すでにいる人は残るが、新しく入ってくる流れはほぼ止まっている。自分で日本法人の代表になろうとする経営者にとって、2026年10月時点の入口は5年前の入口とは別物である。
中国語人材を取り合う相手は、この二万社だけではない
人材マップを描くとき、「在日中国系企業」を一番大きな円にして、同じ国の会社同士で人を取り合っていると考える経営者は多い。数字はその感覚を支持しない。
2025年末、中国籍で「技術・人文知識・国際業務」を持つ人は117,314人いる。日本のホワイトカラー就労資格でいちばん大きな箱で、その四分の一近くが中国籍だ。「高度専門職」は中国籍が22,169人で、この資格全体32,953人の67%を占める。本社からの「企業内転勤」は5,729人。この十数万人の大半は、どこで働いているのか。日本企業と、各国の外資である。中国系企業は、経産省の物差しなら数百社、経営者の人数で数えても二万人余りで、十数万人を雇える規模ではない。
だから、中国語ができて日本市場の分かる人を一人採ろうとするとき、本当の競争相手は日本の大企業と欧米の外資になる。向こうには長期雇用の安心感と、できあがった等級制度がある。中国系企業同士の円は、いちばん引き抜きやすく、いちばん引き抜かれやすい円でもある。二枚の地図に書いたとおり、人材マップに描くのは「自分と似た会社」ではなく「自分の欲しい人を雇っている会社」だ。日本で働く外国人全体の内訳は257万人はどこに、どの資格でいるのかで分解した。
どの数字を使うべきか
答えたい問いによる。
在日中国系の法人に何かを売りたいなら、たとえば人事システムやオフィス、法務サービスなら、有効市場は経産省と東洋経済の桁になる。規模と予算と稟議のある法人は数百社から千社余りで、名簿はほぼ作れる。二万社を前提に営業計画を組むと、十倍の見込み違いになる。
中国人経営者が日本で商売を始める熱の高さを知りたいなら、「経営・管理」の在留者数と新規入国者数がいちばん早い温度計だ。2026年上半期の635人という数字は、「中国系の撤退」や「中国系の流入」というどんな見出しよりも正直である。
資本の出入りを見たいなら対日直接投資で、これはまた別の口径になる。集計の期間で結論がひっくり返る話は中国からの対日投資半減に書いた。
私の習慣は、会議の前に問いを一文で書いてから数字を探すことだ。順番を逆にして、先に数字を手に入れてから問いを探すと、「中国企業は日本に二万社以上あるので市場は大きい」という文が生まれ、しかも言っている本人は違和感を持たない。
埋められない空白も一つ残る。317社は2019年度の数で、以後は官庁の調査がなく、東洋経済の国籍別は本の中にしかない。2026年時点で一定の規模を持つ中国系の日本法人が何社あるのか、公開されていて引用できる数字はない。総覧の国籍別索引を数えれば数百社の桁になると私は見ているが、それは推計で、数字ではない。
出典(2026年10月時点)