佐藤伸明 Nobu Sato

社内の採用チームと紹介会社は、どう役割を分けるか

厚生労働省 令和7年転職者実態調査

目次6
  1. 中途採用は、年に何回発生しているか
  2. 採用の理由で、ポジションは二つに分かれる
  3. 数が多くて希少なポジションをどうするか
  4. 社内チームに必要な力
  5. 外部と組むときに決めておくこと
  6. 立ち上げ期の日本法人は、どこから始めるか

採用を社内のチームでやるか、紹介会社に任せるか。会議でこう問われると、議論はたいてい費用の比較になり、結論が出ないまま次の四半期に持ち越される。分けるべきは会社単位の方針より、ポジション一つひとつのほうだと思う。希少かどうか、年に何人採るか、公にできるか。この軸で並べると、どちらに置くかはだいぶ見えてくる。

中途採用は、年に何回発生しているか

まずここを数えたい。小さな会社ほど、中途採用は「ときどき起きる出来事」で、常設の業務になっていないことが多い。

厚生労働省の「令和7年転職者実態調査」(2026年9月25日公表)は、2024年10月1日から2025年9月30日までの1年間に、他社から移ってきたフルタイムの労働者(期間の定めがない、または1年以上の雇用期間)を「転職者」として数えている。一般労働者がいる事業所のうち、この1年間に転職者がいた事業所は38.2%だった。

事業所の規模で見ると、1,000人以上で94.6%、300〜999人で86.1%、100〜299人で77.7%、30〜99人で60.3%、5〜29人では32.7%である。

数えているのは企業ではなく事業所だが、拠点が一つの日本法人なら読み替えてよいだろう。30〜99人の規模でも、4割ほどは1年間に一人も中途で採っていない。採用は波のように来て、引いていく。専任の採用担当の人件費は毎月同じだけかかるので、この規模で専任チームを置くと、たいてい計算が合わない。

もっとも、採りたい気持ちは強まっている。同じ調査で、今後3年間に転職者を採用する予定がある事業所は63.6%、1,000人以上では90.5%、5〜29人でも61.2%だった。予定がある事業所の40.0%は転職者を優先したいと答え、新規学卒者を優先したいは9.8%にとどまる。中途の市場は、これからさらに混み合う。

採用の理由で、ポジションは二つに分かれる

同じ調査は、職種ごとに転職者を採った理由を聞いている。これを見ると、ポジションの性格がはっきり分かれる。

一つは補充である。事務的な仕事では「離職者の補充のため」が51.8%、販売で54.6%、サービスで60.8%、保安・生産工程・輸送・建設などで59.4%。人が辞めたから埋める。要件は定型的で、同じ募集が年に何度も繰り返される。

もう一つは即戦力である。専門的・技術的な仕事では「経験を活かし即戦力になるから」が64.1%、「専門知識・能力があるから」が51.2%、管理的な仕事ではそれぞれ60.7%と50.2%だった。毎回求める中身が違い、市場にいる人も少ない。

補充型のポジションは、社内チームと求人広告、リファラルで回すのに向いている。回数をこなすほど手順が磨かれ、一人あたりの費用も下がる。即戦力型、とくに探していない人に声をかける必要があるポジションは、外の力を借りたほうが早い。

ここに、公にできるかどうかという軸が加わる。いまの責任者の後任を探す、まだ発表していない事業の責任者を探す。こうした募集は求人として出せないし、社内の採用チームが動けば、社内の誰かが気づく。外部に頼むしかない。

数が多く定型的な職は社内で、少なく希少な職は外部へ。迷いやすいのは、数が多くて希少な職である

ポジションの希少度と年間の採用人数で採用の担い手を分ける。採用理由の割合は厚生労働省「令和7年転職者実態調査」(事業所調査、職種別、複数回答)、担い手の割り振りは本稿の見解

横:希少度 低 → 高 | 縦:年間の採用人数 上が多い、下が少ない | 公にできない募集は、どの象限でも右下として扱う

社内チーム+広告・リファラル

事務・販売・サービス。採用理由の5〜6割が「離職者の補充」で、手順を標準化できる

RPO か専任での依頼

同じ種類のエンジニアを年に何人も。複数社に同時に出すと推薦が重なり、社内だけでは届かない

社内で兼務

ときどき定型職を一人補う程度。求人媒体と知り合いで足り、チームはいらない

外部のサーチ型

管理職・専門職・非公開の募集。「即戦力」「専門知識」が主な理由で、探していない人に当たる必要がある

社内か外部かを会社単位で決めない。ポジションを象限に置いてから、担い手を決める。

図1 厚生労働省の令和7年転職者実態調査では、事務・販売・サービスなどで転職者を採った理由は「離職者の補充」が中心(51.8〜60.8%)、専門的・技術的な仕事では「経験を活かし即戦力になるから」が64.1%だった。数が多く定型的な職は社内、少なく希少な職や非公開の募集は外部のサーチ、数が多く希少な職はRPOか専任での依頼が向いている。

数が多くて希少なポジションをどうするか

日本法人で出てきやすく、しかも置き場所を間違えやすいのがこの象限だ。バックエンドのエンジニアを年に五、六人、あるいは営業チームを一度に十人。

よくあるのは、紹介会社を五、六社並べて、先に決めたところに払うやり方である。同じ候補者が何社からも推薦され、候補者からは段取りの悪い会社に見え、紹介会社のほうも決まる見込みが薄いので力を入れない。反対に全部を社内で抱えると、採用担当が一人で何十件もの募集を回すことになり、人材マップを描く時間がなくなる。

間を取る方法は二つある。一つはRPO(採用代行)で、月額やプロジェクト単位で費用を払い、先方の担当者が入って探索、連絡、一次選考を担う。もう一つは一、二社に絞り、一定期間の専任で依頼して、その代わりに担当者を張り付けてもらう。どちらも、外の相手がこちらに時間を使う理由を用意している点が共通している。

社内チームに必要な力

求人票を出し、面接日程を組むだけなら、事務の仕事で足りる。

いちばん大事なのは人物像を書く力だ。このポジションで実際に何を見極めたいのか、どの条件なら譲れるのか、入社後どれくらいで補えるのか。ここが書けないと、社内チームは依頼を紹介会社にそのまま転送する窓口になってしまう。

次に、人材マップを描く力。欲しい人がどの会社に、だいたい何人いるか。最終的に外部に任せるとしても、地図が手元にあれば、推薦された人がその円の中で上のほうなのかどうか、自分で判断できる。

そして面接官を動かす力である。日本の候補者は返事の速さに敏感で、結論が一週間出なければ、ほかの会社に決めてしまうことが少なくない、と私は感じている。現場の面接官に期限どおり結論を出してもらう役目は、外部には担えない。

外部と組むときに決めておくこと

外部を使うときに困るのは、取り決めがないことである。依頼の時点で、次のようなことを文書にしておきたい。

専任期間をどれだけにするか、その期間に決まらなかったらどうするか。推薦は週に何人までとし、数より精度を求めること。推薦を受けてから何営業日で返事をするか、面接後何日で結論を出すか。最後の点は、むしろこちらを縛る約束だ。うまくいかない協業は、採用する側の返事が止まっているところで詰まっていることが多い。

費用の面では、紹介手数料は理論年収の三割前後で語られることが多く、社会保険料なども含めた一年目の一人あたりコストは給与の1.5倍前後になる。計算は一人雇うと、給与の何倍かかるかに書いた。一方で、転職者のうち人材紹介を通って入社する人は1割に満たない。経路の内訳は転職者の入職経路、人材紹介は1割。残り9割はどこから来るかにある。二つを並べると、外部の枠をどのポジションに使うべきかが見えてくる。

立ち上げ期の日本法人は、どこから始めるか

最初の一、二年は、専任の採用担当を置かなくてよいと私は考えている。採用の分かる人事が一人いて、決まった外部のパートナーが一、二社あれば回る。同じ種類のポジションを年に何人も採るようになったら、その職種だけ社内に引き取るか、まとめてRPOに出すかを考えればいい。最初の数人を誰にするかは日本法人をゼロから立ち上げるに書いたが、採用チームはたいてい先頭には来ない。

次にこの議題が会議に出たら、社内か外部かを先に決めず、来期に採るポジションを一枚に並べて、どの象限に入るかから話し始めてみてほしい。費用の比較は、そのあとで十分に間に合う。たぶん、持ち越しも一回減る。


日本市場での立ち上げについて、三言語で書いています。