佐藤伸明 Nobu Sato

「3年3割」を分解する

大卒の3年以内離職率の年次別内訳:1年目12.1%、2年目11.9%、3年目9.9%

「3年3割」という言い方がある。大学を出て就職した人の3割が、3年以内に最初の会社を辞めるという意味だ。厚生労働省が2026年10月に公表した最新値は31.2%(2023年3月卒)で、前年より2.6ポイント下がった。この数字は毎年秋にニュースになり、若者の我慢強さや終身雇用の終わりが語られる。

採用の実務から見ると、3割という合計にはあまり使い道がない。使えるのは分解したあとの形だ。何年目に辞めているのか。どの業種、どの規模の会社から辞めているのか。

まず、どう数えているか

元のデータは雇用保険だ。事業所が新入社員の資格取得届を出すと、生年月日と取得日が記録される。厚労省はこの生年月日から学歴を推定している。たとえば2022年3〜6月に新規学卒として加入し、2000年4月1日以前に生まれた人が「大卒」になる。その人がその事業所を離れれば、転職でも進学でも帰郷でも離職者として数えられる。

つまり、ここでいう「大卒」には院卒や既卒も混じっていて、「離職」は「転職市場に出た」と同じではない。測っているのは「最初の職場を離れた人」だ。この違いは後で効いてくる。

1年目に集中してはいない

1年目2年目3年目2021年3月卒12.3%12.3%10.3%合計 34.9%2022年3月卒12.1%11.9%9.9%合計 33.8%出所:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」

図1辞める人の割合は毎年ほぼ同じ。2022年3月卒は1年目12.1%、2年目11.9%、3年目9.9%。合計は33.8%で、四捨五入のため内訳の和とは一致しない。

早期離職というと、入社1年目の話だと思われやすい。だが2022年3月卒の内訳は1年目12.1%、2年目11.9%、3年目9.9%で、3年間ほぼ均等に辞めている。その前の年も12.3%、12.3%、10.3%と同じ形だ。

第二新卒は春に一度だけ出てくる層ではない。卒業後1〜3年目のどの年にも同じくらいの人数が最初の会社を離れる、切れ目のない流れと見たほうが実態に近い。直近の1年目離職率は10.1%(2024年3月卒)とやや下がっているが、流れが止まったわけではない。

長く見ても、大卒の3年以内離職率は過去30年ほぼ3割前後で推移してきた。低い年で29%弱、高い年で37%近く。「3年3割」は最近始まった現象ではなく、終身雇用が急に崩れている証拠にもならない。

差が開くのは業種と規模

宿泊・飲食55.4%生活関連・娯楽54.7%教育・学習支援44.2%医療・福祉40.8%小売40.4%産業計33.8%情報通信27.2%金融・保険25.0%製造21.2%電気・ガス12.4%2022年3月卒の大卒、3年以内離職率。出所:厚生労働省

図2同じ3年でも、宿泊・飲食は55.4%、電気・ガスは12.4%で4倍以上の差がある。濃い色は、後で触れる「率は高くないが母数が大きい」部分。

5人未満57.5%5〜29人52.0%30〜99人41.9%100〜499人33.9%500〜999人31.5%1,000人以上27.0%2022年3月卒の大卒、事業所規模別。出所:厚生労働省

図3規模が小さいほど辞める。5人未満の事業所は57.5%、1,000人以上は27.0%。

業種で分けると差ははっきりする。宿泊・飲食サービス55.4%、生活関連サービス・娯楽54.7%、教育・学習支援44.2%に対し、製造業は21.2%、電気・ガスは12.4%だ。事業所規模では5人未満が57.5%、1,000人以上が27.0%。最新の2023年3月卒でも傾向は変わらず、1,000人以上は24.2%まで下がった。

全体の3割は、性格のまったく違う集団を平均した数字にすぎない。ある候補者が3年以内に辞めていることが普通かどうかを判断したいなら、どの業種、どの規模から来たのかを見る必要がある。

外資にとって使える部分

新卒市場で外資が大手と正面から争うのは難しい。大卒就職率98%の分母の記事で書いたとおり、新卒一括採用が先に人を吸い上げるからだ。第二新卒は、その仕組みを通ったあと最初に動き出す層にあたる。

ただ、流れ全体が対象になるわけではない。離職率が最も高い宿泊・飲食や生活関連サービスは人数こそ多いが、外資によくあるB2B職種とは距離がある場合が多い。多くの外資にとって見るべきなのは、率は高くないが母数の大きい部分だろう。1,000人以上の事業所でも3年で4人に1人前後が辞めている。情報通信は27.2%、金融・保険は25.0%。大手の新人研修を受け、年功序列にはまだ縛られていない層だ。

規模感もざっと押さえておく。2025年3月の大学(学部)卒業者は約58万人で、就職者はその77%。3年で3割前後が辞めるとすると、1学年で十数万人になる。正確な人数は定義次第だが、桁はこのくらいだ。

人材マップに落とすなら、考え方は三つあると思う。

  • 最初の会社を1〜2年で辞めたことを、それだけで減点しない。毎年1割が辞めるのは平常の姿で、聞くべきは辞めた理由と次にやりたいことだ。
  • 全国平均ではなく、出どころで母集団を描く。自社の職種に近い業種と規模に絞り、その層の離職率と母数を見る。
  • 窓は卒業後1〜3年目で、しかも一年中開いている。4月入社だけを狙わず、通年で接点を持つ前提で計画する。

動いているのが主に若い層だという点は、日本の転職率の記事で見た形とも一致する。

一つ目。学歴は実際の記録ではなく、生年月日からの推定だ。離職には進学や帰郷など転職市場に出ないケースも含まれるので、中途市場に実際に流れる人数はこれより少ない。

二つ目。年次別の内訳は2022年3月卒(2025年公表)のものを使った。最新の2023年3月卒は合計と主な業種・規模しか確認できておらず、構造が変わったかどうかは詳しい資料を待つ必要がある。

三つ目。集計は事業所単位だ。グループ内の転籍や事業所をまたぐ異動がどう扱われるかは、資料に書かれていない。

最近会った第二新卒は、どの業種から来た人が多かっただろうか。


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