佐藤伸明 Nobu Sato

転職者の入職経路、人材紹介は1割。残り9割はどこから来るか

厚生労働省 雇用動向調査 2025年

目次6
  1. この数字は誰を数えているのか
  2. 転職者はどの経路で入っているのか
  3. 会社が小さいほど縁故とハローワーク
  4. 職種で見ると、管理職の半分は表に出ていない
  5. 25年で10倍に伸びて、それでも1割に届かない
  6. 採用する側は何を組み替えるか

人材紹介会社の請求書は目立つ。年収の三割前後という金額が一枚の紙に載ってくるので、採用費といえば紹介手数料のことだ、という感覚になりやすい。ところが厚生労働省が転職した本人に「どの経路で今の会社に入ったか」を聞くと、民営職業紹介所を通った人は2025年で9.3%、10人に1人に満たない。残りの9割は、広告と縁故とハローワークから来ている。

この数字は誰を数えているのか

常用労働者5人以上の事業所に、2025年の1年間に入った常用労働者である。出典は厚生労働省「雇用動向調査」で、2025年分の年計は2026年8月31日に公表された。全国から抽出した14,840事業所を対象に、有効回答率は60.9%。入職経路は入職者票で本人が答える方式で、集計された入職者票は57,896枚、そこから全国の入職者を約752.7万人と推計している。

分母は二つある。入職者全体の752.7万人には、新規学卒者や、1年以上働いていなかった人も含まれる。このうち入職前1年間に就業経験のある「転職入職者」が506.2万人で、転職の経路を見るときはこちらを分母にするのが筋だろう。

経路は一つしか答えられない。複数を使った人がどれを選ぶかは本人の判断になる。「広告」には求人情報誌とインターネットの求人媒体が含まれ、「縁故」には友人・知人の紹介が含まれる。「出向」と「出向先からの復帰」はグループ内の異動で、「その他」は調査上それ以上に分けられていない。パートタイム労働者も有期契約も入職者として数える、という点も覚えておきたい。

転職者はどの経路で入っているのか

広告と縁故で半分を超える。2025年の転職入職者506.2万人の内訳は、広告31.9%、縁故24.0%、ハローワーク(インターネットサービスを含む)16.2%、その他13.6%、民営職業紹介所9.3%、出向と出向先からの復帰を合わせて3.9%、学校1.2%だった。

パートが混ざっているから低く出るのでは、という見方はある。そこで期間の定めのない一般労働者、いわゆる正社員にいちばん近い層の転職入職者226.5万人に絞ると、民営職業紹介所は14.1%に上がる。それでも広告26.9%、縁故22.7%、ハローワーク15.4%の後ろで、その他12.8%、出向と復帰6.3%が続く。正社員の転職市場でも、紹介会社の取り分は七分の一ほどである。

転職者10人のうち紹介会社経由は1人。会社が小さいほど、その1人も減る

2025年の転職入職者506.2万人の入職経路構成(%)と、企業規模別に見た転職入職者に占める民営職業紹介所の割合(%)。厚生労働省「雇用動向調査」2025年、入職者本人の回答、常用労働者5人以上の事業所

転職入職者の入職経路 全規模
  • 広告求人媒体を含む
    31.9%
  • 縁故友人・知人を含む
    24.0%
  • ハローワークネットサービスを含む
    16.2%
  • その他
    13.6%
  • 民営職業紹介所人材紹介
    9.3%
  • 出向・出向先からの復帰
    3.9%
民営職業紹介所の割合 企業規模別
  • 1,000人以上
    11.8%
  • 300〜999人
    12.1%
  • 100〜299人
    10.3%
  • 30〜99人
    7.4%
  • 5〜29人
    3.3%

紹介会社が見ているのは市場の一部分だ。経路は職種ごとに組み、予算を一行に寄せない。

図1 2025年の日本の転職入職者の入職経路は広告31.9%、縁故24.0%、ハローワーク16.2%、民営職業紹介所9.3%で、民営職業紹介所の割合は1,000人以上の企業で11.8%、5〜29人の企業で3.3%だった。

会社が小さいほど縁故とハローワーク

5〜29人の事業所では、転職入職者のうち民営職業紹介所を通った人は3.3%しかいない。30〜99人で7.4%、100〜299人で10.3%、300〜999人で12.1%、1,000人以上で11.8%である。

小さな会社は何で採っているのか。縁故とハローワークだ。5〜29人では縁故が38.6%、ハローワークが18.7%、広告が22.5%。1,000人以上になると縁故は18.4%に下がり、広告が38.1%に上がる。採用の方法は、会社の大きさでほぼ決まっている。

外資の日本法人の多くは、この統計でいえばいちばん小さい階級に入る。同じ人を取り合う同規模の日本企業は、社長や社員の知り合い、無料のハローワーク、求人広告で採っている。こちらは紹介会社に年収の三割から三割五分を払う。一人雇うと給与の何倍かかるかで書いた計算と重ねると、同じ一人を迎える費用が相手の数倍になる。市場は外資だからといって値引きしてくれない。

職種で見ると、管理職の半分は表に出ていない

職種別に見ると、経路の違いはもっとはっきりする。ここでも期間の定めのない一般労働者の転職入職者で見る。

管理的職業では、縁故28.1%、出向21.2%、出向先からの復帰4.6%。合わせて53.9%になる。民営職業紹介所は18.1%、広告12.6%、ハローワーク7.4%だ。管理職の転職の半分以上は、知り合いとグループ内の異動で決まっていて、そもそも求人として外に出ていない。

事務職は広告27.9%、民営職業紹介所19.9%、ハローワーク15.4%、縁故15.0%。紹介会社の割合がいちばん高い職種だが、それでも二割である。

専門的・技術的職業(エンジニアはここに入る)は広告24.1%、縁故20.7%、民営職業紹介所16.7%、その他15.9%、ハローワーク12.1%。販売は広告30.3%、縁故25.0%、紹介会社18.0%。サービスは広告32.3%、縁故27.1%、紹介会社8.3%。生産工程は広告とハローワークがそれぞれ26.7%、紹介会社6.6%だ。

一言でいえば、現場に近いほど広告とハローワーク、上に行くほど縁故、紹介会社が効くのは事務・販売・専門職の中間層で、それでも二割前後、ということになる。

25年で10倍に伸びて、それでも1割に届かない

人材紹介という業界は、日本で確かに大きくなった。2000年に民営職業紹介所を通って入職した人は全国で5.4万人、入職者の0.9%だった。2025年は58.1万人、7.7%。25年で10倍を超えている。

同じ期間にハローワークは21.5%から15.3%へ下がった(2025年はインターネットサービス込み。窓口だけなら12.2%)。広告はほとんど動いていない。2000年に32.3%、2025年も32.3%である。縁故は26.7%から21.4%に下がったが、いまも二番目に大きい経路だ。

紹介会社が食ってきたのは、主にハローワークの分である。25年かけて食べて、まだ1割に届かない。この構造が数年で変わるとは思えない。

採用する側は何を組み替えるか

経路は職種の層ごとに組む。しかも、日本の会社がやっている組み方に寄せる。

現場職とサービス職は求人媒体と自社の採用ページが主力で、ハローワークは無料なので出しておいて損はない。事務・販売・専門職は広告と紹介会社を並行させ、紹介会社には二割の「どうしても見つからない人」を任せる。管理職は先に知り合いに当たる。顧客、取引先、顧問、すでに働いている日本人社員。そのうえで紹介会社に補ってもらう。日本の会社がリファラル採用に報奨金を出すのは、縁故がもともと第二の経路だからだ。

紹介手数料の行は残してよい。ただ、それを唯一の行にしないほうがいい。年収600万円の事務職なら、手数料35%で210万円である。10ポジションのうち二つか三つはその価値がある。残りを別の経路に回せば、採用ページと求人媒体とリファラルの報奨金をまとめて整えるだけの予算が出てくる。

LinkedInについても一言。この調査に項目はなく、企業が出す求人は広告、スカウトは回答者の受け止め方しだいでその他か縁故に入る。日本での実際の広がりは日本で LinkedIn は役に立つのかに書いたとおりで、主経路に据えるのは早い。

この統計に見えないものもある。「その他」が13.6%あり、自社サイトへの直接応募やダイレクトリクルーティングのスカウトがかなり入っていると思うが、調査は分けていないので推測はしない。それから、聞いているのは経路一つだけで、紹介会社に登録しながら広告から応募した人は、おそらく広告に数えられる。だから9.3%は、紹介会社が過程で果たした役割を少し低く見せているはずだ。それでも倍になるほどではないだろう。二枚の地図を描くとき、私はこの経路の構成を横に置くようにしている。欲しい人がふだんどの経路を流れているかを先に見てから、お金の置き場所を決める。


日本市場での立ち上げについて、三言語で書いています。